星野監督誕生となれば、3年契約、総額6億円程度は最低でもかかるだろうし、コーチ陣招請にもそれなりの経費がかかる。一部では早くも星野チルドレンの関川浩一氏、楽天・仁村徹二軍監督の兄・仁村薫氏、種田仁氏らのコーチ招請情報が流れているが、それだけでは済まないだろう。星野氏の阪神監督、北京五輪日本代表監督時代、それぞれチーフ打撃コーチ、ヘッドコーチを務めている田淵幸一氏(現阪神OB会会長)ら大物の入閣も予想されるからだ。星野政権に大金がかかることは間違いない。
が、楽天には切り札があった。エース・岩隈久志のポスティング(入札制度)でのメジャー入りを認めたことから、まとまった落札金が入ってくるからだ。西武・松坂がレッドソックス入りした際に日米球界を仰天させた「60億円」などという、破格の金額になることはなくても、ある程度の金額にはなるだろう。
実際にどの程度の落札金が見込めるのか。メジャーリーグ関係者は「ダルビッシュが一時期、松坂の60億円を上回るのでは…と言われたが、メジャーも日本人メジャーリーガーのバブルの時代は終わっている。まだ24歳で将来性のあるダルビッシュで松坂の半分の30億円くらいと予想されている。29歳の岩隈の場合は、5億円から10億円の間の落札金に落ち着くだろう」と相場を予想している。
しかし、一部のメジャー球団では「ダルビッシュよりも岩隈の方が実力は上」という評価があるという。ムダなボール球を何よりも嫌うメジャーだけに、ダルビッシュ以上に精密なコントロールを持っている岩隈が高く評価されているというのだ。
となれば、「5億円から10億円の間」と予想される岩隈の落札金がさらに跳ね上がる可能性もある。最低でも5億円なら星野監督1人分。10億円となれば、コーチ陣を含めた星野政権まるごとの経費をカバーした上で、残りを補強費に回せることになる。10億円以上、15億円から20億円にでもなれば、補強費までかなりカバーできる。
「星野監督、桑田監督、東尾監督などといろいろな名前が挙がっているが、また楽天のアドバルーンじゃないか。結局は、佐藤義則投手コーチか仁村徹二軍監督の内部昇格になるのではないか。金のかかる野村監督を無理矢理勇退させ、格安のブラウン監督を招請した球団だからね。球界参入時も、中畑監督、掛布監督などとネームバリューのある候補をスポーツ紙にドンドン書かせておいて、結局は一番地味で金のかからない田尾監督だった。中畑なんか『福島生まれで東北を愛する俺だから、正式な話がきたら引き受けようと思っていたのに、名前を使われただけだった』と怒ったくらいだからね」
球界OBが過去の楽天監督人事を引き合いに出して、今回も「星野監督、桑田監督、東尾監督などはダミーでは…」と疑ったのも無理はない。が、岩隈のポスティングの落札金という隠れ資金があったのだ。 それでも星野氏を良く知る球界関係者は星野政権の前途を危ぶむ。
「阪神監督の時に、『絶対に優勝させてみせます』と確約して、数十億円といわれる巨大な補強費をケチな久万オーナーから引き出し、就任2年目で18年ぶりに優勝させたが、最後は衝突している。『もう1年同じように大金を使った補強をすれば、ずっと勝ち続けられる』と直談判したが、優勝したとたんに久万オーナーはケチに逆戻り。怒った星野が健康問題を表向きの理由にして、あと1年契約が残っていたのに、勇退してしまった。あわてた球団側がオーナー付きシニアディレクターというポストを新設して、阪神からの退団を食い止め、現在に至っている。三木谷球団会長も星野監督の大金のかかる大型補強要求にビックリ仰天するでしょう。岩隈資金の残りでは全然足らないでしょう。2人の蜜月がいつまで続くか保証の限りではない」
確かに説得力を持つ今後の波乱予想だ。星野政権が誕生しても一安心できないどころか、ますます目を離せなくなる。