写真には「1940年11月、サウスフォーク橋の洪水の現場」と書かれており、今から70年ほど前に撮られたものである。
この写真をよくご覧いただきたい。右側にリーゼントカットにサングラス、Tシャツを着た現代風の男性が写り込んでいるのがおわかりになるだろうか。
周りの人物たちはスーツに山高帽など20世紀前半のアメリカを感じさせるファッションのなか、この男の風貌は明らかに浮きすぎるほどに浮いてしまっている。
この男性の正体を巡ってはアメリカ・日本のみならず全世界で諸説が唱えられている。
「未来から1940年にやってきたタイムトラベラー説」、「地球のファッション調査を間違え浮いてしまった宇宙人説」など…。
特にタイムトラベラー説はこの男性がゴツいボディーかつグラサン着用のためか「リアル・ターミネーター」として今も強く唱えられている。
しかし、時空をこえるハイテクを持っているはずのタイムトラベラーや宇宙人はそこまでおマヌケなのであろうか。
実はこの人物の正体は判明しており、近所に住んでいた学校の先生とのことである。
サングラスは1922年に大量生産がはじまっており、Tシャツもアメリカ海軍が下着として着用したのがはじまりで、すでに1940年代には存在していたのだ。つまりこの人物は時代を先取りしすぎていたお洒落なただのアメリカ人なのである。
しかし、このような事例は世界にはたくさん残っており、チャップリンの名作「サーカス」(1928年)の一場面にはなんと携帯電話らしきマシンを左耳にあてながら歩いていく女性が写り込んでいるのだ。「サーカス」は1928年の作品であり、もちろん携帯電話は普及していない(それどころか小型の通信機の発明自体も1940年代とかなり後の時代である)。そのため、この老婦人は「タイムトラベラーだ!」と噂になったのだ。
ところが、これはどうやら当時発売されていた最新鋭の補聴器という説が有力のようである。
昔の古写真・映画から当時ではありえないものが出てくる…多くは見間違いではあるものの現代のオーパーツとも言えるこれらの写真たちは我々の好奇心を常に刺激してくれる存在である。
(山口敏太郎事務所)