満員の買い物客で賑わう地下食料品売り場に、アイコンタクトを交わす2人の老女がいた。前を歩く一人は背伸びしながら買い物客の後ろから陳列ケースを覗き込み、もう一人は少し離れたところからその様子を見ている。いかにも知り合い同士、買い物につきあっているという風情だ。
「と、その瞬間、前を歩く女が、すぐ前方にいた客の鞄に素早く手を突っ込んだ。すると左右と後ろから私服の女性警察官がさっと現れ、女を取り押さえたのです。それを見て逃げだした“見張り”の女も、すぐに行く手を塞がれ、御用となりました」(地元紙記者)
2人は、地元警察の間でも名を知られた名物スリ師・駒崎恵美子(80)と、妹の妙子(72)。2人のスリ歴は、なんと約60年にも及ぶ。
「若いときに悪い友人と仲間になってこの道に入り、その後はスリ一筋で刑務所を出たり入ったり。2人が稼業に入った頃に人気があった“こまどり姉妹”をもじって、いつしか“駒崎姉妹”と呼ばれるようになったのです」(同)
若い頃の2人は、どちらもスリ役だったという。しかし最近は齢には勝てず、高齢で動きの悪い姉・恵美子容疑者が「幕」と呼ばれる見張り役になり、妹の妙子容疑者が「真打」という実行役を務めていた。それでも、2人は自分の仕事にこだわりを持っていた。それが、いわゆる“オープン荒らし”だ。
「2人は過去にも、大型百貨店や話題の商業施設の新装開店の際、ほとんど顔を出していました。そんな犯歴から、大阪府警は今回の阪急百貨店の新装開店にも2人が必ず現れると読み、女性を中心に30人の捜査員を投入し張り込ませていたのです」(同)
調べに対し、恵美子容疑者は「店内を見ていただけ」と犯行を否認。妙子容疑者は「一人でやった。一緒にいたのは女友達で無関係」と供述しているという。
「お互いをかばいあってみせるのも駒崎姉妹ならではの演技。『誰にも頼らず生きている』などとうそぶいているようですが、とんでもない話です」(捜査関係者)
2人にとって今年の年末は、いつにも増して辛いものになりそうだ。