申し訳なさそうな顔で突然、このような報告を口にするお客様。転勤の話をされるということは、遠回しにもうお店には来れない、もう会えないと言われているも同然。
でも、お客様からこんな話を聞くのも、この世界ではよくあること。
寂しいけど頑張ってね、なんて言葉をかけながらも、内心は大切なお客様をひとり失ってしまったことに、少なからずショックは受けている。
転勤=お客様を逃したも同然なのだから。
もちろん、それは仕方のないことだし、ほとんどの場合は、すぐに諦めがつく。
でも彼だけは違ったの。
転勤が決まってからというもの、残りの時間はできるだけ会いたいからと、毎晩のようにお店に顔を出してくれた。転勤してからも、こっちに戻ってくることがあれば、必ずお店まで会いに足を運んでくれた。
毎年、私のバースデーイベントの日には、“行けなくてごめんね”というメールと、誰よりも大きいお花を送ってくれた。
正直、最初はそんな彼をしつこく感じて、重いとも思っていた。
でも、さすがに、3年以上も続けられると、こんなに気にかけてくれる彼と出会えたことに心から感謝していた。
次第に、「次はいつ会える?」と私の方から聞いてしまうくらい、彼と会える時間が待ち遠しくてたまらなかったの。
そんな私は、今日から新たな場所で働き始めることになる。
彼の転勤先の街にある新しいお店でね。
取材・構成/LISA
アパレル企業での販売・営業、ホステス、パーティーレセプタントを経て、会話術のノウハウをいちから学ぶ。ファッションや恋愛心理に関する連載コラムをはじめ、エッセイや小説、メディア取材など幅広い分野で活動中。
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