正しく太古に生息していたプレシオサウルスのものとしか思えないフォルムを持つこの生物の死体は、70年代のネッシーブームも手伝って「ニューネッシー」と呼ばれ、これぞネッシー生息の証拠と言われたりもした。ニューネッシーとされたこの死体は腐敗がかなり進行していたため、漁獲物に悪影響を与える可能性が高かったので一部のサンプルを採取した後、海に投棄された。
現在ではこのサンプルによるDNA鑑定等を行った結果、ウバザメの腐乱死体だった可能性が高いという結論が出ている。
このニューネッシー騒動に近い事件が1808年にスコットランドで起きていた。イギリス本島の北端にあるオークニー諸島の一つストロンセー島ロシェショル湾にて、約16メートルはある謎の生物の死体が漂着しているのが発見されたのである。小さな頭には噴水孔と思しき穴が2つあり、非常に長い蛇状の体に6つのヒレ、背中にはたてがみのようなものが生えており、尾の一部は欠損していた。
この生物はイギリス・エジンバラの自然史学会に持ち込まれ鑑定を受けたが、正体不明とされた。
もともとオークニー諸島近海では古来より謎の巨大な海蛇の怪物であるシーサーペントが目撃されていたため、この生物の骨を鑑定した解剖学者ジョン・バークレイはこれぞ伝説のシーサーペントの死体であると結論づけ、ノルウェーのシーサーペント伝説をまとめた司教エリック・ポントピダンに敬意を表し「ハルシドス・ポントピダニ(ポントピダンの水蛇の意)」という学名を付けて新種の生物であると認定したのである。
その後、この怪物の死体は 解剖等を経て複数の研究者より「正体は非常に巨大に成長したウバザメのものである」と認定されるに至った。ヒレに見えたものの一部が雄のサメに存在する器官の一部であること、生物の骨は軟骨で構成されており硬骨が存在しなかったことなどから、軟骨魚類であり非常に大きく成長する可能性の高いウバザメであると結論づけられたのだ。
なお、当時の研究結果や死体を観察した地元の人の証言などは、今でもスコットランドの国立博物館に保管されており、事前に予約すると閲覧する事も可能だそうだ。
文:和田大輔 取材:山口敏太郎事務所