新日本プロレス
▽21日 新潟・アオーレ長岡 観衆3,996人(札止め)
▼ニュージャパンカップ2018決勝戦(時間無制限1本勝負)
●棚橋弘至(34分02秒 オリエンテーリング・ウィズ・ナパーム・デス)ザック・セイバーJr.○
※ザックが『ニュージャパンカップ』初優勝
“JUST TAP OUT”
3.6大田区大会で鈴木軍のTAKAみちのくが、内藤哲也を挑発した時にこの言葉を使ってからわずか15日。『ニュージャパンカップ』(NJC)に初出場したザック・セイバーJr.はこの言葉を実践するかのように、1回戦で内藤をオリエンテーリング・ウィズ・ナパーム・デスでタップアウトを奪うと、2回戦は飯伏幸太をジム・ブレイクス・アームバーで締め上げてレフェリーストップ勝ち。準決勝ではSANADAから変形アームバーでタップアウトを奪ってみせた。
ザックは85キロと、本来であればジュニアヘビーの体重。いくら現在のヘビー級戦線の平均体重が落ちたとはいえ、ザックの体の線は他のヘビー級選手と比べると細く見えるのは事実だ。しかし、ヒトの生態を知り尽くしているとしか思えないザックの関節技の数々は、ウエイトの差をカバーするには十分。内藤も飯伏も試合後、ザックの実力に脱帽していた。
ここに、飯伏が「邪魔」とまで言い切ったTAKAみちのくがマネージャーとしてセコンドにつき、ザックを精神的にアシスト。ザックは鈴木軍お得意のメンバーの試合介入なしで、決勝まで上り詰めたのだ。そのスタンスは決勝の棚橋戦でも貫かれた。
昨年2度対戦している棚橋とザックだが、棚橋がIWGPインターコンチネンタル王座防衛に成功した昨年9月の試合では、序盤の約10分間、棚橋とザックがレスリングの攻防を楽しむ場面があった。棚橋は「ヤングライオン時代を思い出した」と語っていたが、今回の対戦ではザックの勢いを警戒したのだろう。レスリングに「付き合った」のは序盤の数分だけで、どちらかといえば力で圧倒するファイトスタイルで勝負していたように思う。テキサスクローバーホールドなども見られたが、ストンピングで蹴り上げる場面がいつにも増して多かった。
ザックは力技で来る棚橋の隙を見逃さなかった。病み上がりの棚橋にとっては、ザックの粘りが次第に関節の痛みへとつながり、終盤は苦悶の表情に変化。気がつけば試合はザックのペースになっていた。ザックのしつこさや、つかみどころがないところに棚橋は苦手意識を持つ。ドラゴンスープレックスまで繰り出した棚橋だが、最後は不用意に後方回転エビ固めに行ったところを切り返され、オリエンテーリング・ウィズ・ナパーム・デスを完璧に決められて万事休す。棚橋には“TAP OUT”する選択肢しか残っていなかった。
ザックは、NJC初出場にして初優勝を飾った。優勝者にはIWGPヘビー級、IWGPインターコンチネンタル、NEVER無差別級のいずれかの王座に4.1両国国技館大会で挑戦する権利が与えられるが、ザックは迷わず「オカダ(・カズチカ)のIWGPヘビー」を選択した。
試合後ザックは、TAKAに呼び込まれて外道とともに現れたオカダと“視察戦”を繰り広げた。TAKAと外道の舌戦の後、退場したオカダに対してTAKAは「チャンピオン、ひとつだけ忠告しておくよ。ザック・セイバーJr.のサブミッションホールドの前では、ユー!ジャスト!タップ!アウト!ギブアップのみなんだよ」と忠告。確かにNJCでザックが勝つ時はギブアップ、もしくは相手が逃げられずにレフェリーストップという結末が待っていた。
オカダのギブアップ負けと言えば、腕ひしぎ逆十字固めで敗れた2015年8月の中邑真輔戦ぐらいだ。自身をレインメーカーと称して2012年に凱旋帰国してからは数えるほどしかない。今年の春男ザックを止めるのはオカダか?それともザックがオカダのV11を止めるのか?もしザックがオカダに勝つようなことがあれば、新日本マット内で鈴木軍の影響力がさらに強くなりそうだが…。
文・どら増田
写真・萩原孝弘