新日本プロレス
▽15日 後楽園ホール 観衆1,718人(札止め)
▼6人タッグマッチ(30分1本勝負)
内藤哲也&●BUSHI &高橋ヒロム(12分46秒 体固め)○鈴木みのる&金丸義信&エル・デスペラード
※ゴッチ式パイルドライバー
今でこそロス・インゴベルナブレス・デ・ハポンのリーダーとして、新日本プロレスナンバーワンのカリスマレスラーとなった内藤哲也だが、鈴木みのるが2015年から鈴木軍を率いてプロレスリング・ノアに2年間侵攻するまでは、もがき苦しんでいた。しかし、みのる不在の2年間、ロスインゴで新たなスタイルを確立した内藤は別人のように、大きな進化を遂げることになる。
そんな内藤とみのるが、新日本のリングで“再会”を果たした時、どんな化学反応が起きるのか注目されていた。昨年1月に鈴木軍が新日本に復帰して以降、両者の対戦はなかなか実現しなかった。しかし、今シリーズの『ニュージャパンカップ』1回戦で、内藤が鈴木軍のザック・セイバーJr.と対戦することがきっかけとなり、3.10愛知県体育館大会でロスインゴと鈴木軍の6人タッグが実現した。ただこの時は、内藤とザックの前哨戦という色合いが強かった。
しかし内藤がザックに敗れたことで、15日の後楽園ホール大会で再び両者は対峙することに。みのるは入場すると、内藤に近づき威嚇。内藤に「出てこいよ」と促す。明らかに内藤を意識している。何より会場のファンがその空気をすぐに察して、後楽園を大「内藤コール」に包んだ。
みのるのリクエストに応えるかのように、内藤が先発でゴング。だが、内藤はロックアップすると見せかけてこれをスルー。怒るみのるに蹴飛ばされながら、ツバを吐きかけ、場外へ。結局、内藤はまともに当たることなく、BUSHIにタッチ。その後、両軍による大乱闘から、リング上でヒロムが孤立する状況が続くと内藤が救出。しかしみのるが出てきてアキレス腱固め。さらに場外で鉄柵を使って内藤の古傷であるヒザをメッタメタにした。
リングに上がると、内藤はみのるに反撃すると見せかけて、ツバを吐きかける。これにみのるは激怒し、凄まじい形相で拳を振るった。しかし、内藤はこれをあざ笑うかのようにマンハッタンドロップをお見舞いして、鈴木の動きを止めてみせた。試合はみのるがBUSHIをスリーパーで捕獲し、すぐさまゴッチ式パイルドライバーを決めて3カウント。鈴木軍が勝利を収めた。
試合後、鈴木軍はそれぞれが保持するインターコンチ、そしてIWGPジュニアタッグのベルトを誇示。そして、みのるは場外に残っていた内藤と睨み合う。その内藤は、試合後に流れていたBGM『風になれ』がサビに入ると、みのるのようにエプロンへ。みのるも客席に拍手を促すが、内藤は結局ロープをまたぐと見せかけて、そのまま引き上げていった。
みのるが新日本にいなかった2年間でトップにまで登り詰めた内藤をみのるは“おいしい”と感じたようで…
「立場的に、対外的に、オマエたちの妄想的に、俺の頭を踏んづけてる野郎がいるとしたら、あの野郎は、直接俺の頭を踏んだ野郎だなぁ。内藤!ハハハ!オイ、内藤よ!オマエの行く先に何がある? オマエは何を持ってる? オモロいもん見ーっけ!」試合後にみのるはこのように話すと笑いながら控室に戻っていった。
「鈴木みのる。いや、プロレス界の王様? そんなに俺のことが気になってしょうがないか。まぁ、その気持ちは分かるよ。でもさぁ、いまは『ニュージャパンカップ』中だから、まだ勝ち残ってる選手もいるわけで、失礼な話ですよ。鈴木には、あの言葉を送りたいね。分かるでしょ?」
内藤のみのるに送りたい言葉が「トランキーロ(焦んなよ!)」であることは言うまでもない。今の内藤はみのるを前にしても、決して見劣りしない。内藤自身もみのるとの対戦に手応えを感じたのではないだろうか。内藤のレスラーとしてのステージを上げたことで、両者がシングルを行えば超刺激的な黄金カードになる。またIWGPヘビー級王座という“新日本の宝”を獲りたい気持ちは両選手とも持っているだけに、どのタイミングでシングルマッチ実現に発展するのか期待を込めて見守っていきたい。
取材・文 / どら増田
写真 / 萩原孝弘