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渚ようこの新宿ゴールデン街通信局

 80年10月11日。今は無き銀座の名画座「並木座」で、ある一本の映画が公開されました。作品の名は「戦争の犬たち」…といってもクリストファー・ウォーケン主演の外国映画ではありません。79年に飯島洋一さん=写真=のプロデュースで制作された、今なお“史上最大の自主制作映画”との誉れ高い、半ば伝説と化している名作です。この作品がデジタルマスタリングを経て、なんと27年ぶりにニュープリント版で上映されることになりました。
 飯島さんによると「自宅の倉庫を片づけてたらさ、ホコリをかぶったフィルム缶が出てきて。開けてみたら中にコイツが入ってたんですよ。どこに行ったのかと思って、ずっと探し続けてたのに。見つかるときは簡単に見つかるもんだねぇ」
 自主制作なので当然ながら大手映画会社は絡んでおらず、製作費は当時並木座の支配人だった小泉作一さんらが出資しました。監督は飯島さんと一緒に独立プロを運営していた土方鉄人(ひじかたてむじん)さん。当時の自主制作は8mmや16mmが主流なのに、この作品は商業用の35mmフィルムで撮影してます。内容も火薬を大量に使用してドッカンドッカン派手な爆発シーンのオンパレード。また、軍服や銃、バズーカなど小道具ひとつとってもリキが入っていて、製作陣の「自主制作映画の頂点を作ろう!」という気迫がヒシヒシと伝わってきます。
 なので、出演者も今では考えられない豪華メンバー。泉谷しげる、安岡力也、たこ八郎、佐藤慶、青木義郎、もちろん飯島さんも出演されてます。音楽を担当したのも泉谷さんで、ポスターにもデカデカと登場してます。
 また、当時のチラシにライナーを寄せていたのが松田政男先生。現在は映画評論家として有名ですが、まだ新左翼運動が活発だった当時は世間から政治運動家としても一目置かれていた存在。その松田さんが解説文を寄せているという事実からも、この映画の持つスゴみが伝わってきます。
 公開はシネマアートン下北沢で8月18日から。少し先の話ですが、時期が来たら飯島さんから改めて詳しく語ってもらいますのでお楽しみに。

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