この映画は童話『不思議の国のアリス』を題材に描かれており、アリスが不思議な国に訪れてから10年後、19歳になったアリスが、再び不思議の国を訪れるというお話である。壮麗なCGと3Dで楽しめる世界と、個性溢れる登場人物が絡み合い、どのようなストーリーが描かれるのか、今から楽しみな映画である。
童話『不思議の国のアリス』といえば、幼い女の子たちが大好きな作品と知られているが、実は大人も十分に楽しめるような、深いエピソードが隠されている。ルイス・キャロルは作家や詩人であるとともに、数学者、論理学者でもあった。その知識を活用して、彼は難解な論理学や物理学などを組み込んだエピソードを、ストーリーの中に配置させていた。子どもの頃にはただ面白いだけのストーリーとして読んでいたエピソードが、大人になると深い意味を持つシーンであったことに気付くのだ。
例えば『鏡の国のアリス』にて、アリスが双子に出会うエピソードである。このエピソードによれば、アリスは双子とともに踊り明かした後、双子はアリスに長い長い歌を聞かせた。歌を聞き終わった後で、近くで王様が眠っているのを見つけた双子は、アリスに「王様は何の夢を見ているのか、わかる?」と問いかける。当然「分からない」と答えるアリスに、「実は王様は君の夢を見ているんだ。だから、王様が目覚めたら君は消えてしまうんだよ」と告げた。必死にアリスは否定するが、結局王様のことを起こすことなく、エピソードは終了する。
これは量子力学の「シュレディンガーの猫」の理論に似ているだろう。シュレディンガーの猫とは、簡単にいうと「箱の中には猫がいる。しかし猫がいるのかいないのか、または猫が生きているのかいないのか。それは箱を開けてみるまで分からない」といったものだ。王様の夢のエピソードも、双子が言っていることが本当か嘘か、王様が目覚めるまでは分からない。本当は非常に難しい理論なのであるが、分かりやすい方法でエピソードに盛り込まれている。
他にも物理学的なものや理論学的な要素が『不思議の国のアリス』には描かれている。子供の頃は『不思議の国のアリス』を読んでいたが、大人になるにつれて読むのを止めてしまったという方は、『アリス・イン・ワンダーランド』の映画を見た後、新たな気持ちになってもう一度読み直してみてはいかがだろうか。
(山口敏太郎事務所)
参照 山口敏太郎公式ブログ「妖怪王」
http://blog.goo.ne.jp/youkaiou