甲子園では菊池に負けないくらい話題を呼び、プロ入り1年目の沖縄・名護キャンプでは連日、スポーツ紙の1面を飾ったというのに。
三塁手、一塁手とポジションも転々として「内野も外野もというと中途半端になる。今年は外野手一本に挑戦させる」と、梨田監督は宣言している。プロ2年目の昨年はイースタンでは無敵で本塁打王、打点王の二冠に輝いたが、一軍では主に代打で22試合に出場しただけ。 36打数10安打の打率2割7分8厘、二塁打2本、打点1の寂しい成績に終わっている。三塁・小谷野、一塁・高橋という主力がおり、中田は守るところがないからだ。
今季、外野の一角を確保できなければ、永遠にレギュラーになれない恐れがある。それにしては相変わらず本人の自覚が足りない。寅年の今年にひっかけたつもりなのか、いきなり金色のストライプ入りの奇抜な虎ヘアが話題になっただけ。これでは梨田監督も先行きが思いやられるだろう。
日本ハムの外野陣は、攻守の核でもある中堅・糸井、右翼・稲葉が固定され、中田にチャンスがあるのは左翼だけ。森本との争いになる。そこに実は、首脳陣の遠謀深慮があるというのだ。「左翼のポジションでチャンスを与えるのは、3年目の中田をなんとか一人前にしたいというだけでなく、森本をトレード要員にして、投手を獲得したいという狙いがある。森本なら他球団も関心があるだろうし、それなりの投手を取れる可能性があるからね」。日本ハム関係者がこう楽屋裏を明かす。
森本といえば、新庄剛志氏が日本ハムのスターとして君臨していた時に、その弟分として売り出しに成功。面白パフォーマンスでファンの支持を得ると同時に、俊足、攻守でレギュラーの座をつかんだが、ここ1、2年、今ひとつ精彩を欠いてきている。「ネームバリューもあるし、今なら売り頃。まだ買い手が付くだろう」と日本ハム関係者は踏んでいるのだ。
昨年、FAの資格を取得したが、権利行使せずに残留した森本だけに、トレードを拒否して、FAで自ら行き先を決めることはできる。が、昨年オフ、ロッテ・清水直がFAの権利を持っていながら横浜へトレードで移籍したように、森本が納得できるチームなら円満トレードは可能だ。
森本を目玉にしてトレードで投手獲得という日本ハム首脳陣の思惑だが、そのキーマンになるのが中田だ。中田が左翼のレギュラーポジションを獲得してくれてこそ、初めて実現できるトレード計画だからだ。石の上にも3年というが、中田が今季も飛翔できなければ、「森本で投手陣強化」は机上論で終わってしまう。名護キャンプで首脳陣は中田に対し、二重の意味で熱視線を送ることになる。