大仁田厚は2001年7月29日に実施された参院選に自民党の比例区で当選。一期務めて政界を引退したが、現在も政治家の知り合いは多く、18日の衆院選公示前から政党を問わず、何人かの候補者の応援演説を行っている。
「俺はもう自民党でもないしね。個人的に応援する人を応援させてもらっている」という大仁田は、街頭での応援演説の際、世論調査の政党支持率が示すように、民主党に風が吹いていることを肌で感じ取ったという。
「自民党がだらしないから、民主党にやらせてみようという空気は感じるね。麻生さんの失言や閣僚の不祥事だけではなくて、安倍さん、福田さんが途中で政権を投げ出しているわけだから、この国を自民党に任せていいのかという不信感が見て取れる。景気がよければまた違ってくるんだろうけど、景気が落ち込み、医療制度、年金など問題は山積みで、国が閉塞感に包まれているから新しいものに期待する声があるだろうね」
さらに、大仁田は続ける。ここから“邪道節”が始まる。「だから自民党は悪い部分を反省しないといけないんじゃないの。やっぱり長く政権を持っていると腐るからね。腐っても鯛の自民党かもしれないけど、鯛も養殖の鯛だと身の締まりが少し悪くなる」
ただし、大仁田は「民主党が100%いいという雰囲気ではない」ともいう。
話をプロレスに置き換え、自身がインディー団体のFMWを設立して、メジャー団体の新日本プロレスに噛み付いていった過去を引き合いに出し「仮に与党の自民党が新日本で、野党の民主党がFMWだとするなら、メジャーとインディーの立場が変わるわけだから、これはもう歴史的なこと。いままで大臣を出せず、ある種、冷や飯を食ってきた民主党のモチベーションが上がるのはよく分かる。ただし、政権が交代して良くなるかといったら、期待ばかりではなくて、国民は将来の不安から疑問符もつけている」
今回の衆院選は“地方分権”も一つのテーマになっている。各政党が選挙戦をにらみ、知名度のある大阪の橋下徹知事、宮崎の東国原英夫知事らのアピールを軽視できなくなった側面もあるが、タレント議員といわれた大仁田の目には橋下知事らの奮闘はどのように映っているのだろうか?
「地方分権は前から叫ばれているけど、これまで国主導型だったのが、有名人が知事になってメディアへの露出が多くなり、そういった意見もちゃんと通るような時代になった。それはいい傾向だと思う。でも大変だろうなって。逆にメディアの目があるから何事も細心の注意が必要だろうし。だからこそ、より執務に真剣に取り組んでいるんだろうね。ただ、徳川幕府がそんなに簡単に政権の座を渡さなかったように、官僚が既得権を地方に渡すかといったら、簡単にはいかないように思う」
また、大仁田は元参院議員という立場から「ここらで参議院の在り方も考えないといけないよね。参議院の重要性を高めるのか、それともまったく無くすのかということを、もう一度議論すべきだと思うよ。参議院は拒否権が認められていないから、少数にして拒否権を発動できるシステムをとるとか。結局、衆議院を制したところが国会を制する図式になっている。一院制もありといえばありかもしれないけど、二院制というものをもう一度見直すべきなのかもしれない」と言及。さらに続ける。「おそらく今回の選挙は投票率が高くなるはず。8月30日の開票結果については、各政党は国民の審判を真摯(しんし)に受け止めないといけないと思うよ」と付け加えた。
本業であるプロレスラーとしての今後の活動は、9月26日に東京・新木場1stRINGで自主興行を開催するが、「プロレスは政治と非常に似通ったところがあって閉塞感が感じられる。まあ、いまの俺はそんなに影響力はないだろうけど、プロレスは好きなんだよね。やっぱりやっていたい。プロレスをやることで自分が元気づけられるしね」と、プロレスこそ活力源とした。