斎藤雅樹投手コーチでは、原辰徳監督を抑えきれなかった。荷が重かったということだろう。今季はやたらと原監督がマウンドへ向かう姿が目立つ。
「あれでは斎藤の立場がないだろう。しかも、ここ一番で監督が気合いを入れにいくから効果があるのに、乱発してはピッチャーの方も刺激を受けないだろう」
チーム内からもこういう声が上がっている。
尾花投手コーチが横浜監督に就任が決まった時点で、原監督が独自色を打ち出し、「尾花がいなくなっても、全然困らない」という強気なポーズを取ることは目に見えていた。「オレにあいさつもなく、横浜へ行った」と、原監督は横浜・尾花監督誕生に怒り狂っていたからだ。
勇み足の最たる物が、中継ぎのエースだった山口を「先発の柱にしたい」と配転したことだ。短いイニングを全力投球するのが持ち味の投手を先発に転向させ、本人を戸惑わせ、ようやく慣れてきたと思ったら、リリーフ陣崩壊の埋め合わせに山口を再転向させる節操のなさ。投手陣全体に大きな悪影響を与えたのだ。
しかも、昨年救世主になった外国人投手コンビ、15勝のゴンザレス、6勝のオビスポは出来過ぎで、今季、その反動が来ることは容易に想像できた。ハングリー精神がなくなり、しかもノーマークだった相手は徹底研究してくるからだ。それなのに、原監督は何も手を打っていなかったのだから、今の惨状は当たり前だ。
「ゴンザレスは見るからに体がボテボテしていた。あれでは体の切れがなくなり、持ち味のボールの切れ、コントロールがなくなってしまうのは当然だ。監督やコーチは誰も何も言わなかったのか」
ネット裏の評論家から厳しい指摘をされても反論の余地はないだろう。
昨年まで「育成の名人」小谷正勝二軍投手コーチと、投手起用に定評のある尾花一軍投手コーチのコンビが絶妙だっただけに、それが崩壊したマイナスは計り知れなかった。
「WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)を見ても一目瞭然だろう。原は世界一の監督になったとその気になっているが、一番難しい投手起用は、山田久志がすべて仕切った。だから勝てたんだ。今季の巨人も尾花がいなくなり、投手陣が崩壊した。原には口出しできないような大物投手コーチが欠かせないんだ」
巨人OBの一人はこう言い切る。
なにしろ故障上がりのグライシンガー頼みの現実を目の当たりにすれば、確かに投手陣を仕切れる大物投手コーチは原内閣に必要不可欠かもしれない。今季、リーグ4連覇に失敗したら、WBC日本代表投手コーチだった山田久志氏の招請は現実のものになるかもしれない。