「開幕投手がメッセンジャー、第2戦に岩貞、そして、3戦目にFA加入した西。次節にガルシアを温存できたのだから、先発投手陣の厚さを感じます。メッセンジャー、西、ガルシアと軸になる投手が3人もいるので、大きな連敗をしないで済む」
関西地区で活動するプロ野球解説者がそう言う。
しかし、第3戦目の試合後だった。矢野革命に、虎ファンが「えっ!?」と驚いた。
試合後、一塁側ベンチから矢野燿大監督(50)をはじめ、コーチ、選手ら全員が出てきた。そして、スタンドに向かって一列に並び、頭を下げたのだ。ファンへの挨拶だが…。一般的に、プロ野球チームが試合後に挨拶するのは、ペナントレース終盤の本拠地最後のゲームぐらいだ。シーズンを通し、応援をしてもらったことへのお礼だが、ペナントレースの第3戦、主催試合とはいえ、本拠地・甲子園球場ではないところでの整列は異例中の異例と言っていい。
試合後、矢野監督は各メディアにこう説明していたそうだ。
「ずっとやろうと(球場に)決めていた。来てくれてありがとうというのと、(敗戦して)ごめんなさいというので。勝ったときは一緒に喜んで、負けたときもそうやって」
ファンが驚いたのは、ペナントレース終盤でのセレモニーが開幕カード最終日にあったから。矢野監督が記者団に説明した限りだと、これからも主催・対戦ゲームの節目ごとに挨拶をしていくようだが、こんな指摘も聞かれた。
「ファンの罵声をダイレクトに浴びることになるかも。矢野監督の覚悟とも解釈できます」(前出・プロ野球解説者)
開幕直前の3月25日、矢野監督は競走の名目で“シビアな決断”を下している。今シーズンのクローザーは藤川球児(38)ではなく、ドリスで行く、と発表した。藤川は昨季後半、往年を彷彿とさせるストレートが復活しつつあった。打者の手元で浮き上がる独特の軌道を描くストレートだ。本人は「もう一度、挑戦したい」と奮闘したが、オープン戦後半に調子を落とし、セットアッパーに回ることになった。
藤川は日米通算250セーブまで「あと23」と迫っている。年齢的なことを考えると、クローザーに専念できないとなれば、達成は難しいのではないだろうか。ベテランの記録達成といえば、金本知憲前監督の決断が思い出される。16年7月、鳥谷が更新中だった連続フルイニング出場の記録が止まり、昨年5月には連続試合出場もストップした。鳥谷の打撃不振が原因で、勝利至上主義のための決断だったが、「指揮官としての配慮不足」を指摘する声は今も尽きない。投打ともに不振に陥って連敗を喫したとき、矢野監督がドリスを選択したことが非難されないだろうか。
矢野監督は試合後の挨拶を恒例化すると決めたが、ファンの罵声をまともに受けることになる。単なるファンサービスではない。やはり、相当な覚悟があっての決断だったようである。
(スポーツライター・飯山満)