強制わいせつ致傷罪で有罪判決を受けたNTT東日本の元社員の男性(47)が、退職金不支給は不当として、同社に約1300万円の支払いを求めた訴訟の判決で、東京地裁は3月30日、約600万円の支払いを命じた。
判決によると、男性は08年、茨城県つくば市で女子高生(当時)の胸を触って突き飛ばし、ケガをさせたとして09年に逮捕され、起訴された日に同社を退職。同年11月に水戸地裁で有罪判決を受けた。
NTT東日本は社内規定に基づき、「懲戒解雇や諭旨解雇に当たると考えられる非行」として退職金を全額支給しなかった。
藤井聖悟裁判官は「あくまで私生活上の非行で、NTT東日本の業務に支障が生じたと認める証拠はない」と指摘。「約22年間勤めた功労を全て抹消できるとは言い難い」とし、減額して支給すべきだと判断した。
それにしても、これはとても難しい事案である。そもそも、男性がわいせつ行為に及ばなければ退職に追い込まれることはなかった。こうなってしまったのは、男性側に問題があったのだ。しかし、東京地裁はこの犯罪行為自体は業務に支障を生じさせなかったと認め、減額して退職金を支払うよう命じた。
罪を犯したため、会社を退職せざるを得ないケースは少なくはない。ほとんどの場合、退職金は支払われていないだろう。この判決がきっかけとなり、この種の訴訟が増えることもあるのではなかろうか。
(蔵元英二)