運賃収入に見合った給与体系とするよう橋下市長から指示を受けた市交通局は1月下旬、民間の平均をやや上回る2割強の削減案を提出。しかし、橋下市長は「民間は赤字を出さないよう必死なのに、赤字だらけの交通局が民間平均なのはおかしい」と却下した。
改めて案を練り直した市交通局は市バス運転手の年収(平均739万円)について、来年度から4割程度削減する方針を固めた。「民間並みに合わせる」との橋下徹市長の方針に基づき、在阪の大手私鉄系バス会社の最低水準に引き下げる。市交通局は橋下市長の了承を得て、労働組合に削減案を提示するが反発は必至だ。
市交通局によると、市バス運転手は約700人。平均年収(49.7歳)739万円は、在阪大手5社(阪急、南海、京阪、近鉄、阪神)の平均年収(44.5歳)544万円より195万円高い。しかし、バス事業は28年間、赤字決算が続いており、累積赤字は10年度で604億円に上っている。
当初は2割程度の削減案を示した市交通局だが、橋下市長に一蹴されたため、在阪大手5社のうち最低水準の近鉄(447万円)、南海(441万円)並みの約460万円とする案をまとめた。現在の739万円から実に38%削減となる。
給与カットには条例改正が必要。市交通局側は労使交渉での妥結を経て、今月28日〜3月27日に開かれる議会で可決させ、4月1日からの実施を目指したい考え。実現すれば20億円以上の人件費削減となるという。市役所全職員の給与は来年度から平均7.2%削減される。市交通局の職員約5400人の給与はさらに引き下げることとしており、市バス運転手の下げ幅が最大になる見通し。
「赤字だから民間並みに」との橋下市長の考えは正論だ。ただ、市バス運転手にも生活がある。年収に合わせた住宅ローンを組んでいる職員も少なくはないだろう。いきなり、給与が4割も削減されれば、生活苦に陥る職員もいるのではなかろうか。せめて、何年かに分けて段階的に下げる方法論はないものか。ただでさえ、市バス運転手が数多く希望退職している現状だ。この削減を聞いて、年度末の3月までに、さらに退職者が殺到する可能性もある。そうなれば、市バスの運行にも支障が出かねない。
(蔵元英二)