この時の私はただの視聴者として見ていただけだったが、シブがき隊が82年5月に『NAI・NAI 16(シックスティーン)』で歌手デビューすることになり、3人で本格的にアイドル活動をスタートすることになった。82年といえば、小泉今日子・中森明菜・松本伊代・早見優・堀ちえみ、さらに仙八先生で共演していた三田寛子や後に薬丸と結婚する石川秀美が同期としていた。いわゆる「花の82年組」である。この年は「アイドル大豊作」と呼ばれ、多くのアイドル現場があり、当時中学2年生だった私は、常にアイドル現場へ足を運んでいた。その現場にはシブがき隊がいることが多く、私が初めてシブがき隊と遭遇することになったのは、82年7月だった。
新宿三井ビルの広場で、『新宿音楽祭』の新人賞ノミネート歌手の披露が行われた。そこでセカンドシングル『100%…SOかもね!』を歌い、賞獲りのアピールが行われた。イベント終了後に出待ちをしていたところ、目の前にシブがき隊の3人が通り過ぎた。そこで3人に声を掛けてみると、本木だけが私の声に反応してくれた。ただ「モックン」って言っただけなのだが、そんな些細なことで反応してくれたことが妙に嬉しかった。
その後も様々なシーンでシブがき隊に会う機会があったが、この世代ではトップクラスの人気を誇っていただけあって、近くに寄ることも簡単ではなかった。そんな本木としっかり話をすることができたのは、85年9月のことだった。何の番組だったか忘れてしまったが、TBSで放送された歌番組にシブがき隊が出演した時に出待ちをしていた時である。ここでも「モックン」と声を掛けると足を止めてくれた。実のある話をした訳ではないが、数年前に会った時と変わらない空気を体験できたことで嬉しい気持ちで帰路につくことができた。
88年11月に解散して3人はソロ活動をするのだが、薬丸と布川はバラエティを中心に、本木は役者として活動するようになった。この頃の私は芸人として活動をしていたので、役者の本木に会うことは無いと思っていた。しかしここで奇跡は起こった。91年1月から『ママってきれい!?』(TBS系)というドラマが放送されたのだが、このドラマに本木が出演。なぜかそのドラマの第1話に私がサンタクロース役で出演することになったのだ。チョイ役で本木との絡みは無かったが、スタジオで本木と顔を合わせることができた。当時の私のことなんて覚えているはずはないが、そこで「お疲れ様です」と本木が私に言ってくれた。まさかの挨拶で私は舞い上がってしまった。
その後は本木と縁はまったく無かったが、2008年に本木が『おくりびと』で主演男優賞を獲得した東スポ映画大賞の取材に行った時に、遠目だが見ることができた。今後も本木と会う機会はきっとあると思うので、もし実際に話ができることになったら、私が初めて声を掛けた時のように「モックン」って声を掛けてみたいと思う。果たしてそんな日は来るのだろうか?
(ブレーメン大島=毎週土曜日に掲載)
【ブレーメン大島】小学生の頃からアイドル現場に通い、高校時代は『夕やけニャンニャン』に素人ながらレギュラーで出演。同番組の「夕ニャン大相撲」では元レスリング部のテクニックを駆使して、暴れまわった。高校卒業後は芸人、プロレスのリングアナウンサー、放送作家として活動。現在は「プロのアイドルヲタク」としてアイドルをメインに取材するほか、かつて広島カープの応援団にも所属していたほどの熱狂的ファンとしての顔や、自称日本で唯一の盆踊りヲタとしての顔を持つことから、全国を飛び回る生活を送っている。最近、気になるアイドルはNMB48の三田麻央。