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トランプ大統領が企てる在韓米軍撤退と北朝鮮軍事攻撃

 米国のポンペオ国務長官は7月6日から2日間の日程で、6月に開催された米朝首脳会談のフォローアップのために訪朝した。自身3度目となった訪朝は北朝鮮の非核化に向けた具体的な道筋を付けるためだったが、芳しい成果は得られなかったようだ。

 案の定、米国は7月12日に「朝鮮戦争時の遺骨返還を巡る協議を開きたい」と申し入れたが、北朝鮮当局者は理由を明らかにしないまま欠席し、米国の用意した遺骨を収納する棺約200基は据え置かれたままとなった。これらは米朝会談の合意事項であり、トランプ大統領はいきなり顔に泥を塗られた格好だ。
 「米国側が『制裁は継続する』との立場を鮮明にしたことに北朝鮮は不満だったのでしょうが、すでに米朝首脳会談の合意内容にCVID(完全で検証可能、不可逆的な非核化)を盛り込んでおらず、代わりに『FFVD』(最終的かつ完全に検証された非核化)を持ち出してハードルを下げています。『完全』でなくとも『不可逆的』でなくとも『検証できればいい』と言い出したわけですが、これにはポンペオの仕掛けた罠のニオイがしますね」(国際ジャーナリスト)

 米韓合同軍事演習の一時中止に対し、北朝鮮は38度線に沿って配備している102万人に及ぶ陸上兵力の3分の2や240ミリ多連装ロケット、170ミリ自走砲を一部たりとも撤去していない。また、核実験施設の坑道を破壊しているものの、それは入り口だけであり、“穴掘り”が得意な北朝鮮であればすぐに回復できる。
 しかも、過去数カ月の間に複数の秘密施設で高濃縮ウランを増産したという米国情報機関などの分析もある。北朝鮮には大量のウラン埋蔵があり、高濃縮ウランによる核兵器をより大量に生産できるという利点があるからだ。
 さらに、別の衛星写真では弾道ミサイル製造拠点の大幅な拡張工事を完了させつつあるという。ここでは固体燃料ロケットエンジンなどが製造されており、これらは交渉の戦術というより、核ミサイル開発を諦めていない証拠と見るべきだ。

 ポンペオ長官がこれらの情報を把握していながら北朝鮮に譲歩し続ける理由は何か。トランプ大統領の選挙対策もあるだろうが、北を増長させ、つけ上がらせるのが狙いではないか。
 「ポンペオは米朝会談後『非核化交渉は2年半かかる』と発言していますが、実はこのメッセージが意味深なのです。実際には2年半という短期間に『完全な非核化』など達成できるはずがない。2020年夏から秋にかけてトランプは再選を狙う戦いに入りますが、勝つためには劇的な成果を必要とします。再選を果たすためには北朝鮮の完全屈服、それができなければ戦争が起こる可能性が高い。すぐにではありませんが、トランプは在韓米軍の撤退を表明しています。すでに韓国を見限っており、2年半後、在韓米国人が帰国となれば安心して北朝鮮攻撃に移れるのです」(同)

 北朝鮮がポンペオ長官の姿勢に反発し、核ミサイルの開発を続けるならば、「北朝鮮が約束を反故にした」としてトランプ大統領がより厳しい姿勢を示してくる可能性もある。そのとき、米朝関係には再び緊迫する場面が訪れる。

 実は、在韓米陸軍の現況は人員1万9000人余、戦車約90両、攻撃ヘリ約60機。一方、米空軍は約8000人、F16戦闘機約40機、A10対地攻撃機24機という至って小規模な部隊でしかない。
 「そもそも米国にとって、戦略的な要衝ではない韓国との同盟は価値がありません。カネはかかるし、余計な紛争に巻き込まれるリスクもある。朝鮮有事の備えは、陸海空で北を圧倒する軍事力を持つ韓国軍に任せておけば大丈夫なのです」(軍事アナリスト)

 陸海合わせ1990年に4万4000人だった在韓米軍が、現在では2万7000人に削減されている。事実上、韓国から撤退しつつあるのだ。問題は“飛び道具”だが…。
 「北朝鮮が昨年12月に実施した大陸間弾道ミサイル(ICBM)実験は、米国本土の大半を射程に収めていると各国政府や専門家は指摘しています。ただ核弾頭が標的目掛けて地球の大気圏に再突入するために必要な技術を、北朝鮮はまだ完成させていないと多くの専門家が見ています。最低に見積もってICBMの完成にはあと2年半はかかる。もし完成させたら、それは北朝鮮の最期となるという意味で、ポンペオは『2年半』と言ったのです」(同)

 北朝鮮にとって核・ミサイルは“伝家の宝刀”だ。軍事常識から言えば、可能な限りそれらを持ち続けようとするだろう。中でも、近隣に到達可能な中短距離ミサイルは移動式の発射台から発射されており、日本が受ける脅威は1ミリも減っていない。
 明治以降の日本の国防戦略の中核には朝鮮半島問題が常にあった。日清・日露の両戦争が起きた根底もまたしかり。半島情勢から目が離せない状況は、半年前と何ら変わっていないのだ。

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