合意に至らなかった最大の要因は評価の低さと条件面と見ていいだろう。中島はヤンキースが250万ドル(約1億9200万円)で落札したが、過去、日本人野手でポスティングシステムを使ってメジャー入りした選手の中では、驚くほどの低評価だった。同じ遊撃手で前年、ポスティングでツインズ入りした西岡剛内野手(前千葉ロッテ)の落札額は約533万ドルで、中島はその半分以下。06年にポスティングを利用した当時ヤクルトの岩村明憲内野手(現楽天)は455万ドルだった。
今オフ、ポスティングシステムでブルワーズが交渉権を得た青木宣親外野手(ヤクルト)も、中島と同額の落札額。FA権を行使してマリナーズと仮契約した、同じ遊撃手の川崎宗則内野手(前ソフトバンク)はマイナー契約だ。この現実を見れば、いかに日本人野手の評価が低いか明白。
ヤンキースは中島をあくまでも、レギュラーではなく控えとしての評価しかしておらず、提示された年俸は一部米メディアによると、100万ドル(約7700万円)にも満たなかったという。今季の推定年俸が2億8000万円の中島にとっては、到底のめる条件ではなかっただろう。
では、日本人野手の評価がどうして、ここまで下がってしまったのか。前年の西岡の不振が響いていることは間違いない。レギュラーとして期待された西岡だったが、故障もあり、今季残した成績は68試合出場、打率.226、本塁打0、打点19、盗塁2の惨たんたるもので、もはや来季のレギュラーは保障されていない。
むろん、過去にメジャーでプレーした日本人野手が結果を残せなかったのも遠因としてあるだろう。メジャーで成功した野手はイチロー(マリナーズ)、松井秀喜(前アスレチックス)の両外野手だけ。こと内野手に関しては総崩れといってもいい。最も長くプレーしたのは7年在籍した松井稼頭夫内野手(現楽天)だが、これといった結果は残せなかった。ワールドシリーズ制覇にも貢献した井口資仁内野手(現千葉ロッテ)も、レギュラーとして活躍できたのは最初の2年間だけだった。
中島にとってはタイミングが悪かったというしかない。すべての責任が西岡の不振にあるわけではないが、内野手でしっかり成功した選手が一人もいないのだから、メジャーの評価も低くなる。これもまた、メジャーの厳しい現実だ。
(落合一郎)