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元川悦子のサッカー魔法陣(12)

 昨季、Jリーグ連覇を果たし、開幕したばかりの今季も揺るぎない安定感を示していた鹿島アントラーズ。ところが11日に始まったアジアチャンピオンズリーグ(ACL)1次リーグ初戦の水原三星戦で1-4とまさかの大敗。いきなりACL制覇へ黄信号が灯った。
 すでに国内12冠を獲っている常勝軍団にとって、次なるターゲットは間違いなくACL優勝だ。2007年に浦和レッズ、08年にガンバ大阪がアジア王者に輝いているだけに、ライバルに負けられない意地もある。
 しかし鹿島はどうも「内弁慶」な傾向が強い。過去のACLは08年のベスト8が最高。その08年も1次リーグで北京国安(中国)にアウェーで負け、相手の取りこぼしで何とか決勝トーナメントに進出できた。だが、準々決勝もアデレード(豪州)に敵地で敗れ、アジア制覇の夢が途絶えている。今回もアウェーからのスタートだったため、最低限引き分けたかったが惨敗した。知将・オリヴェイラ監督も「最悪の試合」と肩を落とすしかなかった。今後のJリーグへの影響も懸念される。

 浦和やG大阪に比べると、鹿島には修羅場をくぐった選手が少ない。W杯の大舞台に立った経験を持つのは小笠原満男と中田浩二だけ。その小笠原も負傷が癒えたばかりでフル稼働できず、中田はいまだにリハビリ中だ。他のメンバーは若く国際経験が不足している。そのせいか、水原に1対1で負けていた。「多くの選手が球際を怖がっていた」と小笠原も不満を吐露したという。
 02年のナビスコ杯優勝を最後に5年間、国内タイトルから遠ざかった時も「小笠原ら、かつての常勝時代を知る世代と下の世代の実力差が大きい」と揶揄(やゆ)され続けた。それでも岩政大樹や青木剛、興梠慎三ら若手が奮起。07年と08年に3冠を獲ったことで、彼らも自信を得たといわれた。だが、世界に出てみると、やはりタフさが足りないことがよく分かる。岩政らも現実の厳しさを実感したはずだ。この苦境から這い上がるためにも、たくましさを身につけるしかない。

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