裁判長は反対したが、裁判官5人中3人の多数意見で決まった。一、二審は夫婦の申し立てを却下したが、最高裁で判断が覆った。性同一性障害のため、性別変更した男性と妻の子の戸籍に、男性を父親として、記載することを認めたのは初めてのケース。
04年の性同一性障害特例法施行で、男性に性別変更した後は、法の適用上も男性とみなされることになっている。
民法772条では「妻が婚姻中に妊娠した子は夫の子と推定する」と規定しており、最高裁は「特例法に基づき性別変更した男性にも、この規定が適用される」と指摘。その上で「妻と子をつくることが想定できない夫に結婚を認める一方で、血のつながりがないことを理由に、父子関係を認めないことは許されない」と判断した。
夫は、性同一性障害特例法に基づき性別変更して、08年4月に結婚。09年11月に第三者からの精子提供による人工授精で、妻が長男を出産した。本籍地の東京都新宿区役所に出生届を提出したが、夫の性別変更を理由に「嫡出子」として扱われず、戸籍の父の欄は空白とされた。
そのため、夫婦は戸籍の訂正を求めて、一審・東京家裁、二審・東京高裁に家事審判を申し立てたが、「夫に男性としての生殖能力がないことは明らかで、嫡出子とは推定できない」と退けた。これに不服の夫婦は、最高裁に特別抗告していた。
夫婦には次男(1)がおり、夫は次男についても父子関係の確認を求め、大阪家裁に提訴。一審で敗訴し、大阪高裁に控訴しているが、今回の最高裁判断は次男の裁判に影響を与えそうだ。
(蔵元英二)