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元女性と女性との間の子は実子として認められない?

 性同一性障害のため性別を戸籍上、女性から変更した大阪府東大阪市の会社員の男性(29)が、第三者(男性の実弟)から精子の提供を受けて、人工授精で妻(30)との間に生まれた男児(2)が、法律上の夫婦の子である「嫡出(ちゃくしゅつ)子」と認められないのは不当だとして、東京家庭裁判所に不服を申し立てる方針を決めたという。

 男性は08年3月、戸籍の性別を女性から変更して、現在の妻と結婚。翌年、人工授精により、妻が男児を出産した。しかし、当時住んでいた兵庫県宍粟(しそう)市は「生物学的に親子関係は認められない」として嫡出子と認めなかったという。2年前に東大阪市に転居した後、大阪市にも出生届を提出したが、受理されなかった。さらに、1月27日に東京都新宿区役所に出生届を提出したが、これも受理されなかった。男児は戸籍がない状態が続いている。

 10年3月に当時の千葉景子法務相が法改正検討を表明し、男性は法務省にも何度か足を運んだが、「我々にはどうすることもできない」と回答されたという。男性は「法改正なしで区役所が認めるのは難しい。自分たちの子と認めてもらうには、家裁に申し立てるしかない」と話しているという。

 法務省によると、性別を変更した夫は、性別変更の審判を受けたことが戸籍に記載され、「生物学的な父でないことが明らか」なため、民法の規定に照らし、自治体からの照会には「非嫡出子」とするよう回答しているという。戸籍法では、戸籍事務に責任を負うのは市町村長や区長で、処分に不服があれば家裁に不服申し立てができると定めている。

 簡単にいうと、嫡出子とは婚姻関係にある男女(夫婦)から生まれた子で、逆に非嫡出子とは婚姻関係にない男女から生まれた子という定義になる。たとえば、夫婦間ではなく愛人関係で生まれた子は非嫡出子となる。

 一般の夫婦関係において、夫に生殖能力がなく、不妊治療として第三者から精子を提供されて人工授精で出産した場合は、出生届提出の際に事実を申告する必要がないため、一般的に嫡出子として受理されている。だが、このケースの場合は男性の戸籍に性別変更の事実が記載されており、「生物学的な父でないことが明らか」なため受理されないのだという。男性は「一般の夫婦では提供精子でもうけた子が嫡出子になっている。なぜ性同一性障害だと法的に男性になった後も差別を受けるのか」と訴えている。

 この件に関連して、小川敏夫法務相は「家族制度や親子の関係、生殖医療の問題をどうするかという大変深い問題。すぐ結論を言えないが、非常に重要な問題なので検討したい」との見解を示した。

 性別を変更してまで結婚したからには、2人の子どもがほしいと思うのは自然な流れ。現状、法律が実態に追いついておらず、該当する人たちの悩みは深いであろう。
(蔵元英二)

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