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外資参入の限界が見えてきた ウォルマートの西友売却騒動

 小売世界最大手の米ウォルマートが、傘下のスーパー、西友の売却を模索との報道が流れ、流通業界に大きな波紋を呼んでいる。ウォルマートはこれを「決定ではない」と否定しているものの、検討に乗り出していることはほぼ間違いないと言われる。その一方で、国内小売店自体の“勝者”と“敗者”の二分化も進んでいるという。

 まずは業界関係者が、これまでの西友の歴史について、こう解説する。
 「情報を収集してみると、すでにウォルマートは複数の投資ファンドや流通大手に売却の打診を始めているようです。もともと西友は、西武グループの関連会社として1956年に設立。しかし、バブル崩壊やリーマンショックを経て業績は低迷し、生き残りをかけウォルマートと提携。2005年にはウォルマートが買収し、完全子会社化した。西友が徹底して導入したのは、ネットで仕入れ先、販売先をつなげ、いつ、どこで、どれぐらい売れたか情報を共有するリテールリンク方式などの複数の効率化。これが一時は大きな成果を収めたのです」

 非上場のため詳細は不明だが、そうした努力も実り、総売り上げは約7000億円で収支はほぼトントンと見られている。最近では楽天と組んでネット通販に力を入れると同時に、この6月には制服をウォルマートと同じものにするなど前向きな姿勢を見せていた。そんな矢先、なぜ、このタイミングで売却情報が流れたのか。
 「ネット通販大手の米アマゾンの世界的躍進の影響が大きく、近い将来を見据えウォルマートが戦略の見直しを図ったとも言われている。その一環の中、人口が確実に減り続ける日本で西友のようなハードの流通部門を持ち続けることに大きなメリットがないと判断し、少しでも価値があるうちに売却しておこうという判断になったのでは」(同)

 現時点で売却先として候補に挙がっているのは、楽天やドン・キホーテHDなどだ。
 「小売業界は今、このネット時代においてウォルマートのように戦略を転換せざるを得ないところまで追い詰められている。例えば、スウェーデンのファストファッションブランドであるH&Mは、2008年に鳴り物入りでオープンさせた東京・銀座の旗艦店を7月16日に閉めた。'09年4月に原宿に1号店をオープンさせ、ファストファッションの象徴でもあったフォーエバー21も、その原宿店を昨年秋に閉店させている」(経済アナリスト)

 同様に、圧倒的な物量で席巻していた総合スーパー(GMS)も伸び悩んでいる。'17年度の決算を見れば一目瞭然で、本州四国にイオンを400店舗抱えるイオンリテールの売上高は2兆1978億円で、前年度比0.6%の微増。イトーヨーカ堂も売上高1兆2442億円で対前年比0.9%減。イズミヤも2328億円で同マイナス9.7%だ。
 「H&Mの例を見るように、GMSの苦戦の原因は、衣料品が売れないということもあります。しかも、ネット通販に押されている。ただ、それ以上に日本の消費者が衣料品でも食料品でも、海外直輸入や店舗からの押しつけでは納得しない、安さと同時に品質にこだわるなど、レベルアップしている点があります」(同)

 バブル期前後、日本に大々的に進出した世界第2位の仏スーパーのカルフールは'05年、英スーパー最大手のテスコは'13年に日本市場から撤退。そして今回、ウォルマートも撤退の気配。これで“小売業世界ビッグ3”が日本市場から姿を消すことになる。いずれも欧米で成功したビジネスモデルに、日本の消費者がノーを突きつけ始めているのだ。

 そうした不振の小売業界で、'18年度決算も対前年比8%増の3566億円を売り上げ、年率7〜8%ほどの高い売上伸張率で注目を集めている食品スーパーが、横浜に本社を置くオーケーだ。首都圏1都3県を中心に108店('18年3月31日現在)を展開し、ここ数年で20店舗を増やしてさらなる店舗展開を図っている。しかも、日本生産性本部調査の顧客満足度調査のスーパーマーケット部門で7年連続1位を獲得。その人気の秘密はどこにあるのか。
 「例えば、野菜部門であれば、なぜ高騰しているかなど、その理由を明らかにする。発泡酒が値下げになる期日を記し、急ぎでなければ、それまで待つように知らせるなど、徹底した情報開示を行っている。美味い魚を提供するために超低温での配送に配慮し、常に品質本位、客本位で、ギリギリの値段で売る。それは惣菜からピザ1枚、コーヒー1杯まで徹底しているという。食品のみならず衣料品部門でも、これから日本で生き残るのは、そうした姿勢を見せ続ける店なのではないでしょうか」(業界関係者)

 日本の消費と小売は、新たな段階を迎えているのかもしれない。

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