2100円の稲取金目鯛丼を注文。刺身、たたき、味噌をまぶしたなめろう、この3種はすべて金目鯛である。その下にきざみのりがちらしてあり、これらであったかいごはんを掘り進む…。小鉢には塩辛も。およそ一回の食事としては、「うめえなあ」という感じであることに間違いはない。遠方まで来た甲斐があった、というものだ。
しかし、だ。漁港の食事処らしくそれなりにフレッシュなものであるのは間違いがないが、残念ながらとれとれの歯ざわりや甘みは感じられず…。雨の合間の晴れの日ながら、「今日は漁に出ましたよ!」という気風のいい答えを得ていたただけに、少し残念だった。
少しフォローが必要だろう。まず、観光客の期待の大きさと、命がけで魚を取る人たちそれを出す側との、ギャップの大きさがある。さすがに台風の合間にちらっと晴れればその日の食事処はどこも幻の金目がとれとれ状態で出てくる、とは思っていないが、いずれ筆者も含め観光客のハードルはきわめて高く、それは向こうにとっては悩ましいことでもあろう。
もうひとつは、実際「煮つけがおススメですよ」と言ってもらったにもかかわらず、刺身系を注文した、ということ。憧れの稲取金目は、そんな甘いもんではなかろう。(?)
煮つけを頼まなかったことで、ちょっとした鳩首会議もあったか。
3つ目は、出せないもんは<※出せません>というふうにちゃんとメニューに書いてある。
なので、金目どんぶりは本日出せるレベルなのであるから、黙ってくらえばいい、ということだ。
誰も知らないような漁港のすし屋で、偶然手に入った少量の金目がうまいのはむしろ当り前なのかもしれない。こちらは、幻の魚であるから商売する人にとっても入手も提供も大変だろうし、事情も違うのだろう。
というわけで次回は、漁の状況とおいしいブランド魚を食べる方法などを考えてみたいと思う。
なお、金目の一番うまい食い方は煮付けですよ、と教えてくれた人が多かったことを補記する。