彼女の本業は、書店員です。しかも、名前を聞けば、おそらく日本中の誰もが知っているような、全国展開している大型書店の正社員。余談ですが、実は私も、短大を卒業する時に、その書店の採用試験を受けたことがあります。一次試験であっさり落とされましたが。私の話はさておき、有名大学出身であってもなかなか採用されない、かなりの難関であることは確かです。そんな一流の書店に勤めている彼女は、さぞや順風満々なエリートコースを歩んできた人間なのでしょう。
ですが、彼女がエリートであることは、キャバクラの店内で語られることはいっさいありませんでした。キャバクラに遊びに来る男性客は、そういった会話を望んでいるわけではないのです。ましてや、彼女自身も、キャバクラで副業をしていることはモチロン書店には内緒。ですが、彼女の佇まいは、やはりどこか他のキャバ嬢とは違っていました。真っ黒なストレートのボブカットは、茶髪や金髪を華やかに盛ったほかのキャバ嬢とは明らかに異なる雰囲気を発しています。どちらが良い、とは一概には決められませんね。「いかにもキャバ嬢!」という外見を好む男性もいるでしょうし、「まるで会社にいそうなタイプ」の外見を好む男性もいます。当然、彼女は後者からの圧倒的な人気を博していました。
ところで、彼女はなぜキャバクラで働いているのでしょう? 金に困っているわけでもなく、むしろフルタイムの仕事を持っている彼女にとっては、キャバクラでの副業はかなり大変かと思うのですが…。これに関しては、意外にも「職場の同僚との会話」がきっかけだったそうです。
「同期の女子社員は皆、大学生の頃に、キャバクラでのバイト経験があると言っていた。自分だけその経験がないことが、野暮ったく感じたので、体験入店だけでも…と思って応募した」
当初は、体験入店だけのつもりだったのが、予想外に長く続いてしまっているとのこと。書店を辞めて、キャバクラ一本にする考えはないのか、という問いに対しては、首を横に振りました。やはり彼女は、賢い女性のようです。(キャバクラ研究家 菊池美佳子)