普通のキャバ嬢ならばお客に対して丁寧に接客し、喜ばせるために配慮するものだが、彼女の場合はとにかく話の内容が過激だった。話が進むに従ってタメ口で話すようになり、お客の話にもいちいちダメ出し。時には客に有吉よろしくとんでもないあだ名を付ける程−−−例えば、ハゲを気にしているお客に対して「ブルース・ウィリス」と言ってみたりするなど。
接客命のキャバクラの世界で、このような事を言うのは自殺行為に思える…のだが、彼女の場合は違った。彼女の毒舌や辛らつな意見は、口調はキツイ物があるものの的を射ている事が多く、逆に客からは参考になる、悩みが吹っ切れたとの感想や指示を多く得ていたのだ。最近はタメ口であけすけな意見を言う、ローラやトリンドル怜奈のようなタレントをテレビで観る機会も増えたからだろうか。
建前ばかりの世の中で、彼女のハッキリした物言いはいっそすがすがしいとして、彼女は人気を得ていた。彼女の毒舌は、世のサラリーマン達を叱咤激励する物となっていたのである。
そんな彼女だが、ある男性にだけは最後まで毒舌を言えなかったという。
その男性は、常連で来ていた会社の上司に付き合って来ていた彼女と同い年の男性だったのだが、非常に真面目な性格だった。仕事に対しても愚直で自分の信念を曲げない彼の性格にほだされた彼女は、やがて彼に対しては他の客とは態度を変えるようになり、程なくして付き合うようになった。そのきっかけも、自分といる時に普段の調子でなくなる彼女を心配した、彼の言葉と態度だったのだとか。また、彼も毒舌に隠れた彼女の面倒見の良さに気づいていた。そして、彼女は彼と結婚して店を引退した。
今、彼女は夫を尻に敷きながらも、的確なアドバイスを投げる事で夫をかげながら支えているという。
(和田大輔/山口敏太郎事務所)