高校卒業後、短大に進学するも、数か月で退学した「いずみ」は、高校時代から付き合っている彼氏のアパートに転がり込みます。彼氏は、四年生の大学に進学したばかりで、暮らしているのは1Kのアパート。2人で住むには、少し狭いかもしれません。住むところは確保したものの、日々の生活にお金がかかるわけですから、彼女はアルバイトを始めます。それが、彼氏のアパートから歩いて通える距離にあるキャバクラでした。
「キャバクラで働くことに対して、カレは反対しなかったの?」という質問に対しては、「私は、普通のバイトだとどうしても長く続かない。そのことをきちんと説明したらイチオウ納得してくれた」といいます。彼氏としては、まだ学生という立場上、決して彼女を食べさせてあげられるわけでもなし、そういった負い目があったのかもしれません。
彼女のようなキャバ嬢はけっこう多いです。借金があるわけでもなし、ブランド品が好きなわけでもなし、つまりお金に困っているわけではありません。でも、コンビニやファストフード店で普通にアルバイトすることがどうしても出来ない。ましてや、正社員として就職し、スーツを着て満員電車に乗って通勤し、デスクに向かうなど夢のまた夢。かといって、彼女はそのことに負い目を感じている様子はありませんでした。「世間では当たり前のことかもしれないが、私には出来ない。ただそれだけ」といったスタンスです。
さて、キャバクラ勤めを続けておりますと、当然のことながら、男性客からの誘いを受けることも多くなります。その中から、彼女を本気にさせてしまった男性が現れました。まもなく、肉体関係に発展、妊娠が発覚します。それまでも、彼氏以外の男性と肉体関係に発展することはありましたが、さすがに妊娠してしまうと、もう彼の元にはいられません。同棲を解消し、いったんはキャバクラで仲良くなった女友達の家に居候することになりました。
お腹の赤ちゃんは可哀想ですが、堕胎手術を受けることにしました。尚、彼氏との性行為でも2度妊娠し、堕胎手術を経験しているという彼女。医学的なことはわかりませんが、妊娠しやすい体質なのかもしれません。にもかかわらず、きちんと避妊をしない彼女には、なんと言葉をかけていいものやら…。
さて、女友達の家にも居づらくなった彼女は、実家に戻ることとなりました。彼女を妊娠させた男性客との交流はまだ続いていて、彼のほうから「今すぐには無理だけど、将来のことを考えているから、ちゃんと付き合ってほしい」と言われ、遠距離恋愛がスタートします。尚、この交際には条件がありました。「キャバクラ勤めはもうやめてほしい。コンビニでもファストフードでも、時給が安くても普通のバイトをしてほしい。お金が足りないというなら、僕が援助するから」というものでした。彼女は、イチオウは首を縦に振りましたが、結局は実家近くのキャバクラで働き始めることとなります。理由を訊ねると、「普通のバイトだとどうしても長く続かない」という、お決まりのセリフが返ってきました。こういった書き方をすると、彼女がとてつもなく奔放な悪女に見えてしまうかもしれませんが、実際には話しやすいイイ子といったところです。要するに、彼女にとっての居場所が、キャバクラだったというだけのことなのでしょう。(キャバクラ研究家:菊池美佳子)