彼女が集めている物、それは芸能人達の情報だった。彼女の店の廻りには大きなテレビ局や制作子会社等が多く、必然的に芸能関係者が多くなる。中には芸能人本人が尋ねてくることもあった。
店内の多くのキャバ嬢達が有名人等の来店に浮かれる中、彼女はいつも通りにフレンドリーに接し、ねぎらいつつも彼らの話を漏らさず聞きとめておく。そして、短いトイレ休憩や入れ替わりの時間を利用してケータイや手帳にメモしておくのだ。
酒に酔い、女の子のサービスで気分が良くなった業界関係者は、うっかり現場での愚痴や人間関係などをついぽろりと口に出してしまう。彼女はそれらを余さずチェックして、同じく業界関係者、それもニュースやワイドショーの現場で働く人物や出版業界で働く人物、芸能記者等に高値で売りつけているのだ。
ある時など、彼女の得た情報が元になって大きなスキャンダルが明るみに出た事もある。長い間芸能情報を集めてきていた彼女は、いつしか芸能記者顔負けの情報収集能力と分析力を手に入れていたのだ。
今ではこの情報量だけで、キャバクラで稼ぐよりも何倍もの収入を得ているという彼女。そんな彼女が芸能情報を集め、なおもキャバクラで働き続けるその理由は…なんと、芸能人になる夢を叶えるため。収入を高額なエステやブランド品につぎ込んで見た目を良くして、更に業界人と仲良くなってスカウトしてもらおうと考えているのだそうだ。
さらに彼女は自分で得た芸能情報の多くも「芸能界に入ったらライバルになる芸能人達に対する大きな武器になる」として大切に所有しているのだとか。
げに恐ろしきは、彼女の執着心なのかもしれない。
(和田大輔/山口敏太郎事務所)