都内の某所に勤めるキャバ嬢のAさん(28)は歌がうまく、連日客からカラオケのお伴に指名されている。歌のレパートリーも幅広く、流行りの歌はもちろんのこと、洋楽・懐メロ・アニメソング・軍歌なども歌いこなせるという。その持ち歌は実に5000曲。店では文句なしのブッチギリのカラオケクイーンである。
彼女がなぜここまで、持ち歌を増やせるようになったのか? それには涙ぐましい努力があったという。
もともと彼女は歌が好きであった。とは言っても歌えるのは主に自身が育った90年代のヒット曲であったり、流行の歌ばかりで他のジャンルへの興味は皆無に等しくかの定番デュエット『男と女のラブゲーム』さえも知らなかったという。
当時、彼女はまだ若かったため無知を武器にすることもできたが、さすがに25を超えると年配のお客ともコミュニケーションをとらないといけなくなる。何か共通の話題を持たねば…。
そこで彼女が選んだのは「あらゆる歌に詳しくなる」というものだった。
歌う事が好きだった彼女は、連日カラオケに行きリサーチを重ねるのはもちろんのこと、近所の健康ランドのカラオケ施設へ出向き主に年配の人が好む歌を徹底的に調べ出した。また、80年代のアイドル曲などは独特の振り付けもあり、それも憶える必要もあったという。
それからというもの、彼女は立派な歌謡曲ファンになった。
ちなみに彼女の十八番は昭和の名シンガ−岡晴夫の『青春のパラダイス』。岡晴夫の代表曲である『憧れのハワイ航路』は年配なら誰しもが知っている曲であるが、そこをあえてズラすことにより造形の深さを演出することができるという。
最近は、彼女は藤山一郎にハマっているという。藤山一郎のような粋でダンディなお爺さんと結婚したいとも言ってもいるようである。
キャバ嬢の世界は奥が深いのである。
(和田大輔/山口敏太郎事務所)