その意気やよし。「今度はメンバーがそろうけど、51kgの牝馬だけには負けたくない」高橋成師はそう言い切った。
昨年の皐月賞、ダービー、そして前走・春の天皇賞とGI3勝。最強馬ディープインパクトが去った後、古馬王者の座に上り詰めたメイショウサムソンには強烈なプライドがある。
牝馬として64年ぶりにダービーを制したウオッカの急きょ参戦で盛り上がる今年の上半期グランプリ。たとえ相手に勢いがあろうと、負担重量に7kg差があろうと、古馬の、牡馬の意地にかけて負けるわけにはいかない。
13日の1週前追い切りにもその意欲がにじんでいた。栗東のDWコース。テンからぐいぐいペースを上げて、1200mが76秒8の猛時計。それでもラスト1Fを12秒0でまとめ、併走馬をあっさり突き放した。末脚に磨きがかかり、円熟味も増してきた。
「1週前にこれだけやれれば直前は坂路で軽く乗ればいい。天皇賞の後はさすがに疲れが出て、立て直すのに四苦八苦したけど、10日ぐらいで回復してくれた」と師はうなずいた。
長丁場への不安が少なからずあった天皇賞。しかし鞍上・石橋守との見事なコンビネーションと強靭なロングスパートで激闘をものにした。
皐月賞やダービー、また大阪杯の完ぺきなまでの強さからベスト距離は2000m前後。「距離短縮は好材料」と師も話すように、2200mのこの舞台なら現役最強を証明できるはずだ。
「転厩3戦目を迎えて僕自身もこの馬の特徴をしっかり把握できるようになった。天皇賞より胸を張れるデキにもってこられたし、状態さえ良ければ実戦できっちり結果を出せる。あの馬だけには…」
高橋成師はもう一度つぶやいた。秋にはフランスの凱旋門賞で再度激突するかもしれない両雄。世界戦を前に、どうしても譲れないガチンコ対決だ。