千秋楽で敗れた貴景勝と入れ替わるように、関脇へ陥落した栃ノ心。昇進場所(昨年7月場所)から相次いだ怪我が、その相撲を狂わせた主な原因であることは想像に難くない。
関脇で臨む来場所は、2ケタをクリアすれば1場所での大関復帰が可能となっている。もちろん、当人はそれを強く心に期しているだろうし、ファンの多くも華麗な復活劇を願っていることだろう。
ただ、一口に2ケタといっても、実際にそのような成績を収めるのは至難の業である。なぜなら、関脇陥落力士の大関復帰は、約14年間に渡って成し遂げられていないからだ。
栃ノ心の前に陥落を味わった照ノ富士(2017年11月場所)は、「0勝5敗10休」と1勝も挙げられないまま復帰に失敗。その前の琴奨菊(2017年3月場所)は、「9勝6敗」とわずかに2ケタに届かなかった。
琴欧洲(2014年1月場所)、把瑠都(2013年1月場所)の両名は、共に「8勝7敗」と勝ち越しが精いっぱい。また、千代大海(2010年1月場所)は初日から3連敗を喫した後、現役引退を表明している(4日目は不戦敗)。
以上の5名を遡った上で、ようやく登場するのが大関復帰の直近例である栃東(2005年1月場所)。「3勝3敗9休」の前場所から一転、この場所は「11勝4敗」の好成績を残し大関の座を取り戻した。なお、栃東は「0勝0敗15休」に終わった2004年5月場所でも関脇に陥落しているが、この時も翌場所「10勝5敗」で復帰を果たしている。
精彩を欠いて大関陥落を喫した力士が、翌場所で2ケタを挙げるほど復調するのは難しい。怪我に泣かされてきた栃ノ心にとっては、なおさらハードルが高いことだろう。果たして、31歳のジョージア人力士は、14年ぶりとなる大関復帰を現実のものとすることはできるのだろうか。
文 / 柴田雅人