現地特派員の1人がこう予想する。
「5月の打撃成績があまりにも悪すぎました。巻き返すには、単にヒットを積み重ねるだけではなく、逆転タイムリーなどインパクトの強い結果を残さないと…」
4月末時点での打率は3割2分8厘。しかし、5月の26試合は105打数22安打。『月間打率』になおすと2割1分で、過去10年とそれと見比べても、自己ワーストだった。
「守備でもいくつかエラーがありました。簡単な飛球を落としているんです。本人は陽の光が眼に入ったとか言っていましたが、今までなら、絶対にあり得なかったミスです」(前出・同)
一部では、今季38歳となる年齢的理由から視力の衰えを疑う旨も報じられていた。「メジャー1、2年目ほどのスピードはない」(米メディア陣の1人)とは言うものの、「メジャー全体ではトップクラスの脚力」なる評価は変わっていない。
オリックス時代を知るNPB関係者も「彼なりに打撃復調のきっかけは掴んでいくはず」とエールをおくっていたが、米球宴出場への逆風はこれからが本番を迎えそうである。米メディア陣の1人がこう懸念する。
「イチローとマリナーズナイン、米メディアとの関係ですよ」
イチローは日本人メディアに対しても、特定の取材者にしかコメントを出さない時期も長かった。イチローのコメントは、確かに難しい。また、ぶっきらぼうな物言いをするときもある。もちろん、悪意は全くないのだが、それを不快に思い、敵意があると言わざるを得ない記事を乗せてきた米・地元紙も少なくなかった。しかし、それを封じ込めてきたのも、イチローの突出した打撃成績だった。
前出の米メディア陣が続ける。
「今まではイチローの成績も高く、バッシング記事を書きたくても書けなかった(米国の)全国紙もあるんです。このまま成績が上がらなければ、イチローは厳しいバッシングを受けることになる」
米国の野球ファンはシビアだが、同時に正直でもある。成績の高い選手にはライバルチームの在籍であっても、惜しみなく球宴に投票する。たとえ、『イチロー・バッシング』が報じられたとしても、球宴の投票には影響がないと思うのだが…。
不思議な現象も起きていた。イチローが考えられないような不振に陥っているというのに、マリナーズはア・リーグ西地区で優勝争いを繰り広げているのだ。ファン投票の中間発表があった6月1日時点で、首位・レンジャーズとのゲーム差は僅か1.5。過去10年間の殆どは、「イチローが活躍してもチームが勝てなかった」のだが…。イチローが復調したら、マリナーズは勢いづくはず。いや、また反対にチームが失速なんてことにならないだろうか。