松井が高い成績を残したのは、ロッキーズに在籍した2年間(06-07年)。06年は打率3割4分5厘で、07年は打率、出塁率の数値こそダウンしたが、四球「34」を選び、二塁打「24」を放ち、ダイヤモンドを縦横無尽に駆け巡っていた。ロッキーズの本拠地『クアーズ・フィールド』は高地にあるため、「打球が飛ぶ」。しかし、松井を活躍させた要因は「球場の広さ」にあった。同球場は左翼106メートル、右翼107メートル。中堅127メートルと広域だ。気圧の関係で打球の飛距離も伸びる。そのため、外野手は他球場のときよりも「やや後方」に守る傾向もある。松井は内野手の頭を越える“コンパクト・スイング”で打撃成績を高めたのである。
両翼101.5メートル、中堅122メートルと、もっとも外野フィールドが広いクリネックススタジアム宮城は、松井に有利な球場であり、打球が外野手の間を抜ければ、走塁スピードも存分に発揮できるはずだ。
某主力選手の言葉を借りれば、「最大の補強は岩隈(久志)の残留」とのこと。昨季のように田中将大(22)の登録抹消なんてアクシデントがなければ、少なく見積もってもこの2人だけで「25勝」は稼げる。永井怜(26)、ラズナー(29)、新人の塩見貴洋(22=八戸大)、井坂亮平(26)などがローテーションを争うだろう。また、ここまで伸び悩んでいいた長谷部康平(25)、松崎伸吾(27)、2年目の戸村健次(23)を星野監督がどうレベルアップさせるかも見物である。
現時点で、大型クローザーは補強されていない。そこが今までの星野野球とは違うところだ。中日指揮官時代にまで逆上っても、星野監督が優勝を遂げるとき、必ずと言っていいほど、絶対的なストッパーがいた。メジャーでのストッパー経験も持つ金炳賢(32)を獲得するとしても(1月22日時点)、約2年、独立リーグ等に甘んじてきたため、一抹の不安は残る。外部補強しないとすれば、内部昇格しかない。おそらく、テストされるのは、2人。ストッパーの潜在能力を持っているのは、ドラフト2位指名の左腕・美馬学(24=東京ガス)と、2年目の高堀和也(23)。美馬は昨年の都市対抗予選4試合でリリーフ登板している。真っ直ぐは中央大学時代から急速的に速くなった。元々は変化球投手だったので、球種、コントロールには不安はない。高堀は球速こそ140キロ台半ばだが、フォークボールの落差、キレは一級品である。
チームのまとめ役だった渡辺直人(30)の放出は痛い。岩隈の女房役でもあった藤井彰人(34)を慰留させなかったのは、嶋基宏(26)を育てる意向があるからだろう。ただ、チームの精神的支柱・山崎武司(42)の責務はさらに増した。星野監督の腹心・田淵幸一コーチ(64)は楽天一期生・大廣翔治(28)の長打力に着目している。内部昇格、育成の余地を残したやり方は、今までの星野野球とは少し異なる。新人・美馬、大廣たちをどこまで底上げできるか、星野監督の手腕に注目だ。(スポーツライター・飯山満)