首位広島との連敗を止め、昨季3戦3敗と苦手にしていたDeNA・今永を打ち崩した。この2試合(4月30日、5月1日)を見る限り、打線は上向きのようである。しかし、チームを勢いづけるまでには至っていない。
「昨年オフから金本(知憲=50)監督が課題に挙げていたのは、投手陣の再整備でした。とくに先発陣は計算の立つ投手の頭数が少ない。そこをどう補っていくかをキャンプのテーマにしていましたが、頼りにしていた打線がこのザマです。勝率5割をキープできているのは、投手陣の踏ん張り」(在阪記者)
“投高打低”の予兆はあった。今年のオープン戦だが、阪神打線はチーム打率2割2分5厘で12球団ワーストだった。金本監督はペナントレース本番を迎え、1、2番を代えるなど、打線を“プチ変更”しながら、今日まで戦ってきたが、その効果はナシ。チーム打率2割3分3厘はリーグ5位、総本塁打13、総安打数180、打点74、盗塁7はリーグワーストだ。懸念材料だった投手陣がリーグトップの防御率なのだから、「打線で負けている」と言わざるを得ない(5月1日時点)。
この打線をどう発奮させるかが、ペナントレースの行方を決めそうだ。そこで、急浮上してきたのが、「アノ人」の存在だ。二軍監督を外され、オーナー付シニア・エグゼクティブ・アドバイザーに転じた掛布雅之氏(62)のことである。
「昨季まで二軍監督でしたが、若手の底上げに関して一定の成果が見られたということで、現場を離れました。まあ、ここまでは表向きの話。金本監督と意見衝突もあったらしく…」(球界関係者)
大きく取り沙汰されたことはないが、金本政権には「フシギな傾向」もある。頭角を現した若手が2年続けて活躍できないのだ。北條、原口、高山、中谷、大山…。糸原は奮闘しているが、昨季は故障で終盤戦を休んでいる。先の関係者が、高山と大山を指して、こう指摘する。
「高山の一昨年の打率が2割7分5厘、大山の昨季の打率が2割3分7厘。今年は高山、大山とも2割を切っています(5月1日時点)。ルーキーイヤーがキャリアハイというのはおかしい」
つまり、金本監督や打撃担当コーチの指導法に問題があるのではないか、というわけだ。
「二軍監督だったころの掛布氏は、若手が自分から率先して練習するようにならなければ意味がないとし、時には放任するような練習日も設けました。金本監督は自主性による甘えを懸念していました」(前出・同)
若手の台頭と打撃陣の開花に貢献した掛布氏の現場復帰が検討されても決しておかしくはない。
「掛布氏の今の肩書が意味シンです。オーナー付シニア・エグゼクティブ・アドバイザーって、何をするのか? 本社要人によれば、チーム編成などについて、オーナーが氏に直接意見を求めることもあるとのことです。本社の株主総会も近づいてきましたし…」(ベテラン記者)
掛布氏は野球中継の解説席にも復帰した。金本采配を批判するような言動はないが、若手が2年続けて活躍できない真相は分かっているはず。坂井信也オーナーを始め、球団経営に関わっている本社要人は、この株主総会でチーム低迷に関する批判ができるのがもっともイヤだという。金本監督が「打線低迷」の現状を打破できなければ、株主総会からも掛布氏へのラブコールが飛び出すかもしれない。