チェルノブイリ原発事故で最大の被害を被ったベラルーシで死亡者を解剖し、臓器ごとの放射性セシウムを測定した病理解剖学者、ユーリー・バンダジェフスキー氏(56)が7月に来日し、低線量被ばくと健康被害について警鐘を鳴らした。
バンダジェフスキー氏は'96年から'98年、ホメリ市内の複数の病院で心臓血管系の疾患や感染症が原因で死亡した高齢者を含む大人や子供123人を調査。その結果、心臓、肝臓、腎臓からセシウム137が検出されたという。セシウム137は特に心筋細胞に蓄積しやすく、心筋障害や不整脈が起きやすくなる。つまり、“低線量被ばくは50歳を過ぎると健康に害を及ぼさない”という、これまでの定説は誤りだった可能性を示したわけだ。
「WHOはチェルノブイリ事故で、放射性ヨウ素による小児がんの発生しか認めていないが、克明に調査したわけではない。ところが、同氏が被ばくの論文を発表するや、政府に突然逮捕され禁固8年の刑を言い渡された。政治犯扱いのようなものです」(社会部記者)
日本も、福島県が県民を対象に実施した甲状腺調査で27人が甲状腺ガンと診断されたが、県は「被ばくの影響は考えにくい」としている。
「結局、時の政府にとって都合の悪い研究は排除され、放射性物質による健康被害を訴えようとすると、『差別だ、復興の妨げだ』と異端視される。被災地への帰還が実現し農業が再開されたら、健康被害の問題が噴出するのでは」(ジャーナリスト・窪田順生氏)
目をそらし続けてはならない。