「発馬で立ち遅れたのがかえって良かったのかな。いつものように出ていたら、テンの3F32秒6というハイペースに巻き込まれていたに違いないからね。でも、ハマったとはいえ、前半3F33秒台で上がり3Fも33秒台。この馬自身の末脚も本当にすごかった」
異次元の末脚ですっ飛んできた前走の北九州短距離Sに高い評価を与えるのは現役騎手時代、ニルキングやナルシスノワールなどにまたがり、小倉競馬で大活躍した田之上助手。「あの勝ちっぷりは(夏の小倉から4連勝でデ杯3歳Sを制した)昭和49年のニルキングに似てる? キミも古いね。でも、懐かしい馬を知っているね」。大ベテランの“職人”とは、一瞬にして古き良き時代を知る者同士でシンパシーを感じあえた。
思い出話はさておき、シャローンは前走のみならず5走前の淀短距離Sでは、瞬く間にスプリントGIの冠を意抜いたファイングレインと1/2馬身差の勝負も演じている。
「休み明けの福島戦(6着)はせっかく好発を切ったのに、馬場と枠を考えて鞍上が下げすぎ。位置取りうんぬんより、もまれないことが絶対条件だからね」と田之上助手。「その点で荒れてバラけ出した今の小倉はピッタリ。何より、この馬自身、夏は本当に具合がいい。今が一番というデキでレースに出せる」と胸を張った。
“夏は牝馬の上がり馬を狙え”の格言通り、クールに、そして熱くクールシャローンが再びゴール板に突き刺さる。