そんな中、愛知県名古屋市内で、一人の女子大生が何者か誘拐される事件が発生。その「トンでもないオチ」も含めて世間を騒がしたことがある。
1982年7月26日、夜8時ごろ、名古屋市内に住む加藤さん(仮名)の自宅に女性の声で、「お宅のお嬢さんを預かった。1000万円用意しろ」と電話があった。電話を取った母親は娘のA子(19歳)が通っている自動車学校や友人の家に電話したがいないという。誘拐されたことを悟った母親は警察に電話。すぐに捜索が行われた。「年頃の娘だけに命が心配だ」と両親が心配する中、電話から1時間後A子の姿はすぐに見つかったという。
A子は名古屋駅前の交番で保護されており、発見当時は泣きじゃくっていたが、ようやく落ち着きを取り戻したという。A子は誘拐された時の様子について、「名古屋駅近くで車に乗った女性に道を聞かれ、そのままハンカチで眠らされて車に連れ込まれた。6時間くらい倉庫のような場所に拘束されていた」と供述していたが、ところどころ辻褄が合わない箇所もあり、怪しんだ警察が改めて問いただしたところ、この誘拐事件はA子による「狂言」であることが判明した。
動機について、A子は最初は「(家にお金がなく)自分が死ねば多額の保険金が入る」と考え、自殺を考えていたという。しかし、途中から「自殺は痛いし誘拐されたことにすれば身代金でお金が手入る」ことを思いつき、自分が誘拐されたことにし、実家に電話したという(30代女性の声は自分の声を加工したものだった)。
しかしながら、そもそも「実家を助けたい」の思いで自殺を考えていたのに、実家に電話を掛けたところで、なんの意味も成さないのは考えればすぐにわかることであり、最終的にこのA子は、ボーイフレンドに振られた腹いせを誰かにぶつけたかったのと、遊ぶ金欲しさに行った狂言であることがわかった。
1980年代の女子大生ブームは、当時熊本大学に在籍していたタレントの宮崎美子が牽引したとされているが、世の女子大生は宮崎美子のように決して「聡明」という訳ではなかったようだ……。
文:穂積昭雪(山口敏太郎事務所)