実は陽は今季の契約が未更改。昨オフに今季もソフトバンクでプレーすることを約束し、球団は保留選手名簿に載せた。年俸は昨季の1100万円から、5000万円程度(金額はいずれも推定)の大幅アップで条件提示している。
ところが、陽が1月に代理人を変更したことで、事態は暗転した。新たな代理人となったのは、松坂大輔投手(レッドソックスからFA)らと契約する“凄腕”のスコット・ボラス氏。球団は陽側と交渉を重ねてきたが、折り合わず。時間切れでキャンプインを迎えたため、「契約がまとまるまでキャンプには参加できない」(陽側)と、宮崎への帯同を拒否した。
陽側が要求していると思われるのが、来季のメジャー挑戦容認。そのために、今季終了後に自由契約にすることを求めているものとみられている。
契約がこじれても、陽は保留選手名簿に入っているため、海外を含めた他球団と契約することはできず、ソフトバンクと妥協点を見出すしかない。
ボラス氏は時間をかけて強気に交渉するタイプで、早期決着は難しそうな気配。陽はWBC台湾代表候補に入っており、最悪の場合、ソフトバンクのキャンプを飛ばして、台湾代表に合流する恐れもある。
陽は日本ハムの中堅手・陽岱鋼(よう・だいかん)外野手の実兄で、06年にソフトバンクに入団。当初は鳴かず飛ばずだったが、昨季は9試合投げて2勝3敗ながら、防御率1.48と安定。今季は左のローテーション投手として、期待されていた。球団としては、プロ経験がない陽を一から育てたとの思いが強く、そう簡単にメジャー挑戦は容認できない方針。
石渡編成育成部長は「1日も早くお互いの接点を見つけたい」と語っているが、交渉は難航する可能性も高い。契約がまとまっても、合流が遅れれば、当然調整にも時間がかかり、開幕1軍に不安が残る。
(落合一郎)