30日の役員改選では理事(定数10)が決まるが、25日の立浪一門の会合で、理事候補者の調整が不調に終わったため、定数の10人を超える立候補者が出ることが濃厚となった。以前は事前の調整で無投票が慣例だったが、10年2月に続き、2期連続で投票によって、理事が選ばれることになる。
北の湖親方の現在の役職は理事より1階級下の役員待遇であるが、26日、理事選に立候補することを届け出た。すでに所属する出羽海一門の協力で、理事の当選ラインとなる10票前後を確保しているとみられ、理事当選は確実な情勢。理事選後に開かれる新理事会では、他に適切な候補者が見当たらないため、北の湖親方が新理事長に推される見通しだ。北の湖親方が理事長に就任するのは、辞任した08年9月以来、約3年5カ月ぶりとなり、再登板は史上初となる。
北の湖親方は02年2月に理事長に就任。4選を果たしたが、08年9月にロシア人の弟子(白露山)の大麻問題で引責辞任。昨年4月には弟子(清瀬海)の八百長関与で、理事から役員待遇に降格していた。
北の湖親方の辞任後は、武蔵川親方(63=元横綱・三重ノ海)が08年9月から10年8月まで理事長を務めたが、野球賭博問題で謹慎後、体調不良のため辞任。後任を現職の放駒親方が引き継いでいた。放駒理事長は野球賭博問題の後処理や、八百長問題の噴出で、まさに貧乏くじを引いた恰好だった。しかし、放駒理事長は現役時代、クリーンさで知られ、八百長をかたくなに嫌ったといわれており、他の人物では八百長問題に対じできなかったともいえる。
現在の角界は一連の不祥事の影響で、著しい人気低迷に陥っている。公益財団法人移行や年寄名跡問題も抱えている。協会自体が粛正改革していかなければならない時期に、かつて、自身の弟子が問題を起こして処分を食った北の湖親方が、理事長として復帰するのはイメージとして良くない。粛正改革どころか、昔の体質に戻るのではないかとの懸念もある。しかしながら、改革派の貴乃花親方(39=元横綱・貴乃花)ではまだ早すぎて、「北の湖さんしかいない」という人材難が、北の湖親方の再登板を生む背景のようだ。
(落合一郎)