巨人が仕掛けた中大の157キロ右腕・沢村拓一の一本釣り。身内のスポーツ報知を使った「沢村の意中の球団は巨人。巨人以外の指名なら、大リーグ、浪人の選択肢も」という沢村の巨人逆指名報道に対し、中日が中日スポーツ紙上で「中日の1位指名は中大・沢村」と真っ向から逆襲。3年ぶりの日本シリーズ出場を目指すCS第2ステージ同様に、巨人にガチンコ勝負を挑むと宣言している。
巨人の一本釣り作戦の裏には、他球団にない人脈がある。元スカウト部長の巨人OB末次氏の夫人が、中大・宮井総監督の娘という肉親関係。さらに中大・高橋監督が巨人OBという太いパイプ。すでに巨人で活躍している阿部、亀井といった中大OBの存在。他球団に沢村獲りをあきらめさせるには十分な人脈がある。
が、中日サイドはこう反論しているという。「中大の高橋監督は、巨人OBということばかり強調されているが、中日でも投手コーチをしているし、スカウト経験もある。中日OBでもあることを忘れてもらっては困る。ウチが沢村を1位指名することに何の問題もないよ」と。
こう言うが、実は、中日は大学球界ナンバーワン左腕といわれている仏教大・大野雄大がドラフト1位候補だった。しかし、左肩痛のために秋のリーグ戦に全く登板できない状態で、中日は急きょ沢村に方向転換している。巨人とすれば、ふざけるなと地団駄を踏む思いだろう。
いくら「沢村は意中の巨人以外の指名なら大リーグ行き、浪人も視野に入れている」という情報を流したところで、裏金問題の温床として希望枠制度が廃止されている現状では、他球団の指名阻止の切り札にはならない。
「当たりクジを引き当て、誠意を持って交渉すればなんとでもなる」と、中日サイドが自信を持つのは当然だろう。しかも、今季、4年ぶりのリーグ優勝をした落合監督率いる中日は、12球団一の投手王国で、吉見、チェン、浅尾ら若手投手が次々と育っている最高の環境にある。今季、投手陣崩壊で3位に転落した巨人とは対照的だ。
中日の沢村ドラフト1位指名の動きで、巨人の一本釣り作戦は、暗礁に乗り上げることになる。さらに、追い打ちをかけるように、阪神の沢村獲りの情報も流れている。「一時期は早大の大石で決定的と言われていたが、ここへきて事態は急変。沢村1位が大本命だと言われ出した」と阪神関係者が明かす。
中日の沢村1位指名情報だけでもショッキングなのに、その上に阪神までが参戦するようなら、巨人の一本釣りどころではない。今季のペナントレースと同じく激烈な三つどもえ戦になってしまう。風雲急を告げてきた10・28ドラフト。早大・斎藤佑樹争奪戦だけでなく、沢村獲り合戦からも目を離せなくなってきた。