セミファイナルに登場したFCFの「カゲマングロ」。暗黒のマスクを被り、黒い拳法着を身にまとった彼からはまさに「闇の戦士・カゲマングロ」を想像させた。リングアナのSUNAHOが「一度口に出すと癖になる」、TAJIRIはtwitterのつぶやきの末尾に必ず「カゲマングロ」とつけてしまうほど、名前だけで相当なインパクトを与えた。
そのTAJIRIはKUSHIDA・小路晃を引き連れて大原はじめ&ジェシカ・ラブ&カゲマングロのFCF勢と対戦。先発はKUSHIDAと噂のカゲマングロ。いきなりリング中央で「カゲマングロぉー!!」と雄叫びをあげる。「???」という表情のKUSHIDAであったが…ロープワークの中、リープフロッグから華麗にヘッドシザース・ホイップを決めたかと思えば、KUSHIDAの腹部に拳をたたきつけるカゲマングロ。奇妙なポーズから繰り出す拳に館内からはやんやの歓声が上がる。
ジェシカは大好きな大原と一緒にタッグを組むのが嬉しくて仕方ないような様子。しかしSMASH軍は小路にスイッチ。「空飛ぶオカマ」と「最後の日本男児」の異次元対決が繰り広げられる。パワーで勝る小路に対し、館内からは「もっと優しくやってやれよー!」との声が飛ぶ。小路のコーナーへの突進を艶やかにかわしたジェシカは、自分の股間を小路の顔面にあてがっていく。座っている小路の唇を奪おうとするが、さすがに慌てて逃げる小路。
そしてTAJIRIと大原が対戦。前回の対戦では「あんなに当たりの強い大原は初めて見た」と称していたが、今回は逆に大原を試しているような感じがしたTAJIRIの試合運び。FCF何するものぞといわんばかりに、三人の攻撃をあえて受けていた様子であった。
目立ってしまったのはFCF軍の連携ミス。特にカットプレーのタイミングが少々ずれているようだった。さすがに初めて組むトリオ。加えてジェシカは試合を忘れてしまい大原にキスを迫る場面も見られる程。そのあおりを受けてカゲマングロの攻撃は失敗に終わってしまう等、ちぐはぐな場面が多く見られた。
カゲマングロが意地を見せたのは、TAJIRIのバズソーキックをかわして決めたジャーマン・スープレックス。何とか自軍の流れを作りたかったが、コーナーに登ったところでKUSHIDAがキック。あえなく場外に落ちてしまうカゲマングロ。しかしジェシカが流れを止めずTAJIRIに決めたスワントーン・ボムはお見事。試合後のTAJIRIも「ジェシカはブレがない」と称えていた。試合はカゲマングロがTAJIRIのバズソーキックの前にあえなく轟沈してしまった。
カゲマングロの「珍活躍」をかき消すかのように、試合後大原とKUSHIDAが場外でもみあう場面も見られた。試合後TAJIRIは「KUSHIDAも今の状態ではヤバい」と喝を入れる。そんなKUSHIDAは10月3日からアメリカのOVW(Ohio Valley Wrestling)に短期遠征を行い、SMASH.9でOVW現役王者とのタイトルマッチが組まれる事になった。
第3試合、すっかりSMASHではお馴染みとなったキム・ナンプンが登場。今回連れてきたパートナーはキムいわく「肉!」と明瞭な表現なケニー・ラッシュ。一方、女性選手との対戦を嫌ったリン・バイロンがゴーレム・ナイトとタッグを結成。TAJIRIいわく「ナウシカとオームみたいなタッグ」。
いきなりキムがマイクを握り、ゴーレムをなじる。「お前ホントにイスラエルから来たのか? 新宿で夜遊んでいそうな外人じゃないか!」。更にリンに対しては「お前は俺のものだ!」となんとも嬉しくないお誘いをかけていた。
ゴーレムとラッシュの大型外国人同士のぶつかり合いに館内から歓声が起こる。そんな中ゴーレムを抑えるキム、ラッシュがロープに走ってエルボーパッド…開始早々同士討ちを演じてしまう。「やってられないよ!」とパイプ椅子を持つキムとラッシュ。だがキムの「座れ!」の一言でイスに座る両者。お互いに座って話せばわかる、とでも言いたいのか? ちゃんと話し合った結果(とは言っても2〜3秒だが)改めてリングに戻る両者…仲間割れはしなかった。
「私はアクションスターになりたい! その為に怪物のようなヤツとやりたいの!」と常々言っているリンにとってラッシュは格好の相手。さすがに体格差は大きく、ラッシュのネックハンギング・ツリーに捕まってしまう場面も見られたが…ゴーレムのフォローを得た合体スイングDDTを決める等、キム&ラッシュを翻弄する場面も見られた。
結局リンがラッシュにプランチャを見舞って釘付けにしている中、ゴーレムのラリアット一発でフォールを奪われてしまったキム…リンにちょっかいを出そうとしても倍以上のお返しを食らう等、いいところなく敗れてしまった。
試合後はお約束のような仲間割れ、そして「今度は私のような『イケメン』を連れてきます!」と宣言して去って行ったキムであった。
今回の「トホホ」はキムとカゲマングロであっただろう。だがキムのトホホっぷりは観客も認めるところ。逆にそのキャラクターは愛される結果になっている。次回の来日時に「イケメン」を連れてくるのかは不明だが、今後もSMASHのリングに「イマ、ナンプン!?」「キム・ナンプン!!」の掛け合いは続くことであろう。
TAJIRIが試合後の総括で「とんだ一杯食わせ物でしたね」と称されてしまったカゲマングロ。FCFからの刺客の中で正直言って不合格の烙印を押されてしまったのかも知れない。キャラクターとファイトスタイルがかみ合っておらず、何となく中途半端な印象だけが残ってしまったようだ。
世界には知られざるプロレスラーが数々存在するが、胡散臭いレスラーもそれと同じく存在している。SMASHにはそのキャラクターを定着させた男、キム・ナンプンが存在する。カゲマングロよ、めげずにもう一度来日し新たな姿を我々の前に見せてくれ!!
第2試合終了後、大家健が矢郷良明から託された手紙と「菓子折り」を持参してリングに登場。富山県民の素晴らしさを絶叫している際、こちらも富山県民の小路晃が入ってくる。「お前は富山の恥だ!」と張り倒した小路は「俺がSMASHの門番としてこのリングを守る!」と叫び、一手に引き受ける様相を見せた。
オープニングマッチでは大分AMWのジ・アッチィーがSMASH初参戦、児玉ユースケと対戦したが、児玉のスクールボーイの前に敗北を喫している。児玉はプロ入り嬉しい初勝利を飾る事ができた!!
(Office S.A.D. 征木大智(まさき・だいち))
◆『SMASH.8』
2010年9月24日
会場:東京『新宿FACE』(観客600人=超満員札止め)
<セミファイナル 6人タッグマッチ 時間無制限1本勝負>
○TAJIRI&KUSHIDA&小路晃(13分44秒 片エビ固め)大原はじめ&ジェシカ・ラブ&●カゲマングロ
※バズソーキック
<第3試合 タッグマッチ時間無制限1本勝負>
○ゴーレム・ナイト&リン・バイロン(6分51秒 片エビ固め)●キム・ナンプン&ケニー・ラッシュ ※ラリアット
<第1試合 シングルマッチ時間無制限1本勝負>
○児玉ユースケ(5分49秒 エビ固め)●ジ・アッチィー【AMW】
◆『SMASH.9』
2010年10月30日(土)開場:18:00/開始:19:00
会場:東京『新宿FACE』
【決定カード】
<OVW選手権試合>
(10月30日現在のOVW王者)vs.(挑戦者)KUSHIDA
その他の詳細・お問い合わせはSMASHオフィシャルサイト http://www.smashxsmash.jp/ まで。