1月3日の初防衛戦に敗れ、チャンピオンに在位した期間は1年にも満たなかった。しかし、飾り気のない朴訥なキャラクターとユーモアあふれる語り口は、常にファンからも担当記者からも愛された。
そんな前王者の性格を表わすかのように、パーティー自体もサービス満点の内容だった。そのメインはなんと田中栄民トレーナーによるマグロ解体ショー! 築地から仕入れたマグロ1本を見事な包丁さばきで解体し、我々にふるまってくれたのである。
小堀を慕って多くの関係者も終結した。角海老OBで現レフェリーのビニー・マーチンさん、平成のKOキングこと坂本博之さんの元気な顔もあった。司会を務めたのはリングアナウンサーの富樫光明さんだった。みんな楽しそうにビールのグラスを傾け、昔話に花を咲かせた。
会場の片隅に萩森健一さんがいた。この人物、もともとボクシングファンに過ぎなかったのだが、小堀のファイトスタイルと性格、秘められた潜在能力に惚れこんで一念発起。なんと何千万円という大金を工面して、世界戦をプロデュースしてしまったのである。
また、素晴らしいボクサーに出会ったら全面的なバックアップを買って出るのか? 萩森氏に問いかけると、次のような答えが返ってきた。
「どうでしょう、小堀くんのような選手が他にいるかというと…。ただ強ければいいというわけではありませんから」。
首のけがによる引退は決して本意ではないだろう。ただ、これだけ愛され、惜しまれながらリングと決別できるボクサーはなかなかいない。お酌をしてまわる小堀は幸せそうだった。