監督/ビム・べンダース
出演/アリシア・ヴィキャンデル、ジェームズ・マカボイほか
『パリ、テキサス』(84年)などの世界的巨匠ヴィム・ヴェンダーズによるラブ・ストーリーだが、設定の面白さと、ヒロインの北欧出身美人女優アリシア・ヴィッキャンデルの魅力で楽しめる。ついでに“肉食系リケ女”の口説き方も学べて(?)お得な話題作だ。
休暇で来ていたフランス、ノルマンディーのホテルで生物数学者・ダニー(アリシア・ヴィキャンデル)は、実はイギリスの諜報員であるジェームス(ジェームズ・マカボイ)と出会って激しい恋に落ちる。彼らは互いの任地で、命の危機に瀕する中、相手を想う…。
何しろ、女は搭乗した潜水艇が深海で操縦不能になり絶対絶命、男はソマリアで過激派の捕虜になり、海辺の敵基地で銃を突きつけられ危機一髪。互いに死と隣り合わせ、いつ最期を迎えてもおかしくない状況下、ン千キロ離れていても相手を想い、焦がれるという設定が面白い。世界の真ん中で愛を叫ぶ…ではなく、世界の涯てで貴方を想う! って寸法だ。ホテルでベッドをともにしていたころが忘れられないんだろうな。
2人が理数系の会話で盛り上がるシーンがあるが、このあたりが“リケ女の口説き方”講座のポイント。高度な専門的話題についていけることが肝心。お互いに危険なミッションに携わる、というニオいがなきゃダメ。そんな共通認識があるのが肝要なり。理数系頭脳ゼロのボクでは絶対太刀打ちできないね。
そんな知的パツキンのアリシアは魅力的な高嶺の花。リケ女らしくメガネをかけている顔も素敵だよ。メガネ美人は本当の美人、ってね。潜水服姿のガラス越しの美貌も、作業服美女フェチのボクにはゴチソウだった。その上、超積極的な肉食系だもの。海岸では黒のビキニで水と戯れ、さりげなく誘惑風。相手の躊躇に対し「チキン!(臆病者)」と挑発しまくり、キス&抱擁も彼女が主導権なのだからイギリス諜報員もタジタジ。やるなあ、肉食系リケ女!
「普通は、寝た相手ともう会わない」主義のサバサバ派なのに、その禁を破るほど、彼との相性は抜群だったのだろう。“肌の合う”ってヤツだね。相手役のジェームズ・マカボイも『ウォンテッド』(08年)のころはヘナチョコだったけど、最近はすっかり渋さと野性味を醸し出している。今回の役柄は、いずれジェームズ・ボンド役に推挙されたいというアピールか、というのは、ゲスの勘ぐりかも。
果たして、極限状況で絶対の危機に陥った2人は、晴れて死地を脱して再会できるのか? スケール大きいラブ・ストーリーだが、裏テーマはやっぱり“リケ女の口説き方”でしょ?
《映画評論家・秋本鉄次》