上原が“復活”したのは昨年8月。すでにチームは優勝戦線から脱落していたが、『救援投手』としての適性が試された。巨人時代も期間限定でクローザーを務めている。20代のころから「先発よりも!」と、クローザー専念を何度も勧められてきた経緯もあり、上原は首脳陣の期待に見事に応えてみせた。
20代と比べ、ストレートのスピードは落ちている。しかし、上原の『コントロール』と『修正力』は並大抵ではなかった。
昨季、上原は後半戦の33試合にリリーフ登板し、与えた四球は「1」。32試合連続無四球である。走者を背負った場面で投入されたことも何度もあったが、引き継いだ「のべ14人」の走者を1人も本塁に帰還させていない。9月に入ってから、「一発」を続けて食らったが、その後、上原は捕手のサインに首を振り、フォークボールを多投するなどし、修正している。ペナントレース終了間際の2週間、7イニングを投げ、14奪三振。こういうシーズンの終わり方をすれば、バック・ショウォルター監督も「2011年は上原がブルペン陣の中心になる」と考えたはずだ。58歳のアンディ・マクフェイルGMも「クローザー・上原」に手応えを感じているのではないだろうか。オリオールズは救援タイプの投手も補強したが、ハッキリ言って「小粒」だ。こういう「次いでみたいなクローザー投手の補強」を見せられると、チームが『クローザー・上原』を計算に入れているのは間違いない。
上原自身、メジャーで生き残るため、先発投手としての自負、こだわりをいったん仕舞いこんだようである。その決意と「生き残るための柔軟な姿勢」は評価すべきだ。
上原の脇を固めるリリーバーは2人いる。昨季、ア・リーグ4位のセーブポイントをマークしたケビン・グレッグ(32=前ブルージェイズ)が加入。昨季の37セーブは自己最多でもあるが、ストライクを先行させるタイプではない。本人も「セットアッパー役」を自覚しているそうだ。
あとは、マイク・ゴンザレス(32)だろう。ゴンサレスは昨季、快速球左腕としてかなり期待されたが、期待を裏切った。途中、DL入り(故障者リスト)もしている。「ストレートの速度、威力は蘇りつつある」との情報もあるが、オリオールズ情報に強い米メディア陣によれば、
「今でも期待されているのは本当です。でも、昨季のDL入りした理由は『肩の怪我』なんです。焦らず、慎重に場数を踏ませ、本格的にクローザー復帰させるのは来年になる」
とのことだ。
「ショウォルター監督がオリオールズの指揮を取ったのは、去年の8月4日。上原のストッパー起用は同監督のもとでテストされたんです。『上原を蘇らせたのはオレだ』という自負も強く持っています」(前出・同)
おそらく、上原が登板過多になった場合、グレッグとゴンザレスが一時的にその代役を務めると思われる。
オリオールズはジム・ジョンソン、ジェレミー・アカード、アルフレード・シモーンをセットアッパーに予定している。ジョンソンはクローザー失敗を繰り返し、セットアッパーに転向。アカードもクローザー経験を持つが、昨季まで在籍していたブルージェイズに冷遇され、オリオールズに流れてきた。シモーンは事件に巻き込まれ、調整が遅れている。こうしたライバルたちの経歴から考えても、ショウォルター監督は上原を中心にブルペンを構成しているのは間違いない。
キャンプは右肘の張りを訴え、別メニューが続いていた。しかし、上原の表情は明るい。メジャー3年目、上原は自分の居場所を勝ち取ったようである。(スポーツライター・飯山満)
※アルフレード・シモーンは「Simon=サイモン」と表記するメディアもありますが、本編は米国人ライター、現地特派員の発音にしたがいました。他の外国人選手名の方仮名表記についてもベースボール・マガジン社刊『月刊メジャー・リーグ』を参考にいたしました。