でも、高橋も使ってほしい。ゲレーロは外野守備もできるので、「三塁・高橋、左翼・ゲレーロ」の布陣も考えられる。
定位置争いが激しいのは三塁だけではない。遊撃は堂上直倫と新人・京田陽太(22=日大)、二塁はベテラン・荒木雅博(39)、亀澤恭平、状況次第では堂上、京田がまわることも考えられる。一塁はビシエド、森野将彦、福田永将、石岡諒太。ビシエドの守備位置について、森繁和監督は「レフトがあるかもしれない」ともコメントしており、三塁の高橋と一発のある福田、石岡が奮起すれば、中堅・大島洋平、右翼・平田良介の主力組も脅かすことになる。どの選手も複数のポジションが守れるので、相手チームの先発投手が右か左か、あるいは、打撃の好不調によって組み換えられる。野手陣の層が厚くなったように思えた。また、「走れる選手」も増えた。
ゲレーロの打撃力もそうだが、“タダモノ”ではないと思ったのは、2月25日のオープン戦だった(対広島)。初回、一死二塁、先取点の好機で打席がまわってきた。カウント3ボール1ストライクから投じられた「低めの変化球」に、一瞬、体が反応したが、すぐに静止してみせた。好機で緩い変化球がくれば、ストライクゾーンから少し外れていても、思わず手が出てしまうのがバッター心理だ。そこをたくみに突いて、「打ち損じ」を誘うのが日本式の配球である。ゲレーロは打ちごろの緩い変化球を我慢し、四球を選んでみせた。称賛すべきは、選球眼の良さだけではない。チーム関係者によれば、ゲレーロは試合前、同日の広島先発・野村祐輔がどんなタイプなのかの説明を求め、「失投の少ない投手」と聞かされていたそうだ。そのことがインプットされていたから、「失投の少ない投手が簡単に打ちごろのボールを投げるはずがない」と判断し、この低めの緩い変化球を“打ち損じを誘う罠”だと見破ったのだ。
ゲレーロに四球を選ばれた後、広島の捕手・會澤は一塁に向かうその背中を一瞥していた。「この助っ人は要注意」と思ったのではないだろうか。
投手陣だが、やはり、新人・柳裕也(22=明大)が良い。変化球の持ち球が多く、しかも、それを低めにコントロールするテクニックもある。ブルペン投球を見ていると、プロの世界で“10年もメシを食ってきたような貫禄”も漂っていた。振りかぶるときとセットポジションの両方で投げ込みをする。ここまではどの投手もやっているが、セットポジションで静止する時間帯を何パターンも試していた。クイックモーションも2、3パターンあった。実戦的な投げ込み練習を堂々とできる新人は少ない。
左腕・アラウホ、右腕・ロンドンの両外国人投手がカギを握る。ロンドンは制球力に難アリと聞いていたが、四球を連発して自滅するほどではないと思った。もっとも、ブルペンでは「ストレート8割」で投げていたので、実戦形式になってみなければ分からないが…。昨季と比べ、投打ともにレベルアップしている。ただ、今年も正捕手不在となりそうだ。杉山翔大、桂依央利らを先発投手との相性で使い分けていくと思われるが、吉見一起が4年目の木下拓哉(25)と組む場面が多かった。木下が正捕手争いに終止符を打つとすれば、このチームは昨季覇者・広島、大補強の巨人を食うのではないだろうか。