また、伊東監督に課せられたのは打線強化と先発陣の再整備。とくに、12球団ワーストとなった「本塁打80」をなんとかしなければ、優勝戦線には食い込めない。デスパイネの退団は痛いが、新加入のマット・ダフィー、ジミー・パラデスはフリー打撃でサク越えを連発していた。右バッターのダフィーは中距離ヒッターと聞いていたが、打球が速くて強い。「フェンス直撃かな」という打球が失速せずにライナーで飛び込んでいく。守備も巧い。ショートもできそうだが、伊東構想では「三塁固定」。両打ちのパラデスはユーティリティー・プレーヤーと聞いていたが、はっきり言って、守備はヘタだ。しかし、左打席で放つ打球は力強く、弾丸ライナーの一発もあれば、滞空時間の長い放物線を描くときもあった。12球団ワーストの本塁打数を解消するには、このパラデスは使わざるを得ない。チーム状況として、清田、荻野、岡田といった好外野手もいて、首位打者・角中も外せない。外野が空いていないとなれば、一塁か、指名打者ということになるだろう。
投手陣だが、昨季は「涌井、石川に続く3番手以降の先発候補が弱い」とされていたが、この点は佐々木千隼(22=桜美林大)の加入で解消された。スリークオーターで150キロ強のストレートが投げられ、かつ、鋭利な角度で大きく曲がっていくスライダーもある。右バッターは外角のスライダーに苦労させられるだろう。先発コンバートが決まっている西野勇士、復活を目指す唐川侑己、ロッテ2年目のスタンリッジがこれに続く。佐々木のキレのあるストレートを見ていると、去年の「涌井10勝+石川14勝」に、「+10勝」がイメージできるので、益田、内、松永、南の救援陣で20勝近くを拾えば、Aクラス入りは確実。左腕・陳冠宇、4年目の二木康太がステップアップできれば面白いのだが…。
チームを発奮させる起爆剤が出てくるとしたら、二軍スタートだが、島孝明(18=東海大市原望洋)ではないだろうか。「将来性」については各球団スカウトが太鼓判を押していたが、ストレートのキレには二重丸。ブルペン投球でも「自分の間、リズム」を持っている“大人の投手”だと思った。田中靖洋、原嵩あたりも先発テストしてみたい若手だと思ったが、残念ながらそんな余裕はない。
ただ、このチームにはリーグ5位の低打率と3番手以降の先発投手に不安材料があっても、勝ちゲームを落とさず、確実に積み上げていく巧さがある。昨季の72勝68敗3分けは、佐々木の指名成功で確実に変わる。覇者・日本ハム、2位・ソフトバンクがもたつけば、台風の目になるのではないだろうか。