『RISE130』
▽3日 東京・後楽園ホール 観衆 1,800人(超満員)
「課題が見えた大会でしたね」
大会終了後、TEAM TEPPENの那須川弘幸会長は、TEPPEN勢が3戦全勝だったにもかかわらず、あえて「課題」という言葉を口にした。
オープニングマッチには須田翔貴が登場。昨年11月のデビュー戦では1R53秒でKO勝ち。意識する選手は親友でもあるプロ野球オリックスの“神童”山本由伸と発言したことで話題となった。
今回は対戦相手が怪我のため変更となり、カードが決まったのは大会の1週間を切った状態。さらに対戦相手の松元“アウトサイダー”仁志は2階級上とあって、デビュー戦から一転、苦労した。1Rからパンチで圧倒した須田だったが、松元は倒れない。2Rに入っても須田の猛攻は続くが松元はなかなか倒れず。しかし最後は左で崩して右でダウンを奪いKO勝利を飾った。
須田は「1R、KOにこだわりすぎた。きょうの試合内容は悔しい」と振り返っていたが、次なる標的として「スーパーフライ級のランカーとやりたい。瀧谷渉太選手とやって、(王者の)田丸辰に年内には挑戦したい」と前を向いた。那須川会長は「倒れなかったのは体重差。次は53kgとやるから楽になる」と期待。須田も「いい経験になりました」とキツかった試合を振り返っている。
工藤政英のフェザー級ベルトに照準を合わせるTEPPENの“ヤンチャ男”篠塚辰樹は、18戦17勝1分けでダウン経験すらないRISE初登場のRyukiと対戦。1Rは飛び膝蹴りをヒットさせ、終盤には得意の右ストレートでRyukiにとって初となるダウンを奪った篠塚だが、一気に攻め込めない。2R、セコンドからは「ボディを狙え」と指示が飛ぶが、Ryukiがローやミドルで盛り返していく。
最終ラウンドの3Rになると、Ryukiがパンチを的確に当てるように。元プロボクサーの意地で倒れることはなかったが、最後は棒立ち状態。あと30秒あれば倒される可能性もあっただろう。結果は篠塚が判定勝ちを収めたが、「ダメージはかなりあった。試合内容が悪かった」と反省しきり。ただ練習でも調子が良かった飛び膝蹴りが決まったのは、収穫だったようだ。同い年のチームメイト那須川天心からは「3Rを闘えたのはいい経験になったよ」と言われたという。
那須川会長は「辰樹はこれからああいう相手としかやらないんだから、今回一番課題が見えた選手じゃないですか」とベルト獲りを目指す篠塚にとっていい試練だったと捉えていた。
メインでは“キックの王子様”白鳥大珠が、秀樹とのライト級王座決定戦に出場。入場から大盛り上がりの後楽園ホール。2人には試合前から大きな声援が送られていた。
1Rは互角の展開。2Rの中盤になると秀樹のプレッシャーが効き始めてペースは秀樹ペースに。しかし、フィニッシュは唐突に起こった。秀樹が白鳥の蹴りをカットした際に、自らのスネを裂傷する怪我を負った。ここでドクターチェックが入り、ドクターが試合を止めた。秀樹は「まだまだできる」とシャドーを披露したが、傷口はかなり深くレフェリーは白鳥のTKO勝ちを宣告した。
分かりづらい決着に場内からは怒号も飛んでいたが、白鳥が「初防衛戦は必ず秀樹選手とやります」とマイクで訴え、事態は収束した。天心から「やっぱ持ってるわ」と笑顔で声をかけられたという白鳥は、前日2日が23歳の誕生日。自ら最高のバースデープレゼントを手に入れた。客席からも「誕生日おめでとう」と祝福する声が多数飛んでおり、本人は「すごくうれしかった」という。
これで3.10大田区総合体育館からの-61kg世界トーナメントへの出場も決定。減量して臨むことになるが「問題はない」と言い切った。白鳥は「4ヶ月連続の試合でキツい部分もありますけど、身近にいる天心も早いペースで勝っていたので、行きます。1回戦のブラジル人、楽しみです。ファンにもトーナメントに出ている選手にも『白鳥、ヤバいぞ』と思わせたいですね」と意気込んだ。
この試合の勝者がトーナメントに出場できると聞いて、よりモチベーションが高まったそう。「内容は納得してないけど、ベルトはここにある!」という言葉には力強さがあった。スターになる人間は「持っている」ことが多いが、白鳥が本当に「持っている」なら世界を相手にもやってくれるはず。今回TEPPEN勢はいずれも不完全燃焼に終わったものの、明確な「課題」が見え、収穫になった。この経験は次戦に必ず活かされるはずだ。
取材・文 / どら増田
写真 / 垪和さえ