「今年は長嶋茂雄氏が激励に来る予定はなく、松井秀喜氏も臨時コーチを務めません。オフの大型補強の延長で各社とも例年以上の人数で取材チームを編成していますが」(TV局スポーツ部員)
そのゴジラ松井と第3次原政権の距離感について、さまざまな憶測も飛び交っていた。セ・リーグ出身のプロ野球解説者がこう言う。
「松井が臨時コーチを初めて引き受けたのは、2014年。以後、5年間で4度、コーチを務めてきました。高橋由伸前監督が誕生した16年は『後輩を応援するつもりで』と話しており、巨人とも友好な関係にあると思いました。今回はスケジュール都合がどうしてもつかなかったようで、臨時コーチを辞退したことに他意はないそうです」
だが、水面下では意味シンな情報も交錯していた。「あえて、巨人が松井氏と距離を置いたのではないか」と――。
「原政権との関係が深ければ、仮にペナントレースで敗戦した場合、責任論の余波が彼にも及ぶかもしれません。距離を置くことで、次期監督の就任要請を出しやすい状況にしたのではないか」(球界関係者)
松井はFA権を行使してメジャーリーグに挑戦し、米国で引退している。「巨人を出ていった選手」であり、他にFA権を行使して他球団に転じた駒田徳広、”行使未遂”の槙原寛己の両氏がいまだコーチ帰還していない点から考えると、「特別な存在」とも言える。
「実績もそうですが、人柄の良さもあると思います」(ベテラン記者)
その人柄の良さのために、巨人帰還が実現しない可能性もあるという。
現在の松井の肩書は、ヤンキースのGM特別アドバイザーだ。ルーキーリーグやマイナーの指導を手伝い、スカウティングに関しても意見を述べてきたそうだ。
「エンゼルス、アスレチックス、レイズと渡り歩きましたが、引退セレモニーはヤンキースで行われました。ヤンキースが他球団に移籍した選手に花道を用意したのは異例と言っていい」(米国人ライター)
ヤンキースの一員として今もニューヨークのファンに愛されている理由は、人柄の良さに尽きる。09年ワールドシリーズでMVPに選ばれた実績も大きいが、左手首を骨折負傷した06年の言動にファンは感動したという。
「左翼を守っていた松井はライナー性の打球を捕球するため、猛スピードで前進し、芝生にグラブを引っかけて骨折してしまいました。そのとき、松井は『ファンに心配をかけて申し訳ない。チームにも迷惑をかけ…』と謝罪の言葉を伝えたんです。失礼な言い方になるが、アメリカ社会では自分に非がある場面でも謝らず、裁判に発展するケースも少なくありません。松井の謙虚な姿勢にニューヨークのファンが好感を抱きました」(前出・同)
こうしたエピソードを聞かされると、ヤンキースは松井を絶対に手放さないはずだ。巨人が将来の「監督・松井」を本気で考えているのなら、宮崎に詰めかけた巨人ファンの気持ちを松井本人に伝える場面も設けなければならないだろう。(スポーツライター・飯山満)