Ryukiは、6歳から格闘技を始め、アマチュア時代には130試合を戦い、J-netスクールウォーズ58kg優勝とMVP受賞、K-3大阪大会の優勝と多くのタイトルを獲得している。14年にK-1甲子園に出場するも、準々決勝で敗退。15年にホーストカップでプロデビューし、初戦白星を飾る。RIZIN.1にも出場した元RISEウェルター級王者のブラジリアンファイター、ダニロ・ザノリニが主催するファイトドラゴンで連勝を重ね、17年に中国で行われた『英雄伝説2017』60kg級でホイ・フェイに判定勝利しアジア王者に輝く。プロデビューから18戦無敗をマークしている大阪出身の22歳。キックボクシングの新鋭だ。
先日、成人式を終えたばかりの篠塚だが、「早くカードが決まってほしい」と昨年11月のRISE両国国技館大会以来となる試合を心待ちにしていた。「Ryuki選手は、蹴りもパンチもうまい選手で強いと思います。けど、まあ自分の(ほう)が強いかなって(笑)。カッコよくKOします!」と強敵相手にKO宣言した。
プロボクシングからキックに転向し、昨年2月にデビューした篠塚だが、デビュー2戦目で現RISEフェザー級王者工藤政英(新宿レフティージム)にKO負けを喫し、早くもキックの洗礼を浴びている。「あの試合は考えが甘かったなと。でもあの負けがあったから今の自分があると思います。だから工藤さんには感謝していますね。でも負けたままじゃ終われないので、必ずぶっ倒します」と振り返り、リベンジを誓っていたが、工藤戦以降は3連勝中。無敗のまま工藤のベルトに挑戦するには、この試合も負けられない。
プロボクシングではA級まで上り詰めた篠塚だが、なぜキックボクシングに転向したのだろうか?
「もともと友達を介して天心と仲良くなったんですよ。ボクシングでなかなか試合が組まれない時に、キックの大会を観に行ったら、演出も派手だし目立てるから。俺みたいなタイプはキックのが自由に楽しめるなと思って、天心に相談したら『来ちゃえよ』って(笑)」
キックに転向するキッカケを作ってくれた同い年の天心が、昨年大晦日に臨んだフロイド・メイウェザー戦は客席から観戦した。
「メイウェザーの入場、カッコよかったですね(笑)。でもボクシングの経験がある人間として、あのメイウェザー相手に前に出る天心の姿は、すごくカッコよかったし、リスペクトしかないですね」と“世紀の一戦”を振り返る。
TEPPEN GYMでは兄貴分的な存在である白鳥は、篠塚と同じくボクシングの経験を持つ。「ボクシングテクニックがキックの他の選手に比べると、飛び抜けてるのは分かると思うけど、ここ最近の練習で蹴りの技術が上がってきてる。キックボクサーとして今までよりも一段階上での試合が見られると思いますよ」と篠塚を評している。
篠塚は「デビューしてからは充実した1年だった。キックの洗礼も受けて、いろんな経験ができ成長した1年だったと思います。キックに転向してから、体幹も強くなったし、筋肉が足腰にもついたからパンチ力が上がりました。ただもっと蹴らなきゃダメですね」と笑みを浮かべていた。那須川会長は篠塚のヤンチャな性格には手を焼いているようだが「キックをやり始めてからのほうがパンチは強くなってる」と篠塚の成長に目を細めていた。
工藤が保持しているベルトを「1日でも早く獲りたい」篠塚にとって、やっておかなければいけない相手がいる。昨年11月の両国大会で対戦予定だった森本“狂犬”義久(BRING IT ON パラエストラ葛西)だ。この試合は直前に狂犬が負傷し流れてしまったが、狂犬に勝てば今大会でタイトル挑戦の可能性もあった。本人にとっては「遠回りした」意識も強く、両者は篠塚のデビュー後から舌戦を繰り返してきた。両国大会の試合後には、控室に戻る前に客席の狂犬のもとに出向き挑発している。
「骨が折れようが試合する選手だと思ってたんですけどね。ああいうタイプはRISEに2人もいらないでしょ?早く試合して、キャンキャン吠えてるアホ犬を黙らせたい。フリーノックダウン制にしてレフェリーストップではなく、あいつが立てなくなるまで殴ってやりたい」と話す篠塚は、うっ憤を全てぶつけるつもり。狂犬も「クソガギを黙らせる」と受けて立つと明らかにしているだけに、危険な試合になるのは必至である。
「プライベートですか?友達と遊んで好きな音楽を聴いてます(笑)。いつもこんな感じなんですよ。夢は遊んで暮らすことなんで、とりあえず試合に勝ち続けて、稼いで好きなことをやりたい。ファンのみなさんには、試合はもちろん、プライベートのオレも見てほしいですね。一緒にレゲエのイベントに行こう!と書いておいてください(笑)。あと最近はみんな歌ってくれるようになったんですが、入場のとき、導楽さんが作ってくれた入場曲の『LIFE GOES ON』をみんなで歌いましょう」
自他ともに認める「飽きっぽい」性格。髪型の変化も激しい篠塚だが、「自分が目立つためには最適な舞台」とキックには真面目に取り組んでいる。篠塚に勝っている工藤もパンチは「速くて見えなかった」と試合後に語っていたほど、スピードとパワーを兼ね備えているだけに、対戦する選手にとっては脅威だ。
白鳥と同じく、会場では女性ファンの黄色い声援が飛んでいるが、ヤンチャなキャラが浸透していくにつれ男性ファンも増えてきた。こういうタイプの選手は“有言実行”が厳命されるだけに、今回のRyuki戦、そしてその先に組まれるであろう狂犬戦は負けられない。成人しても「大人になる」気持ちが「サラサラない」のが篠塚の魅力。今年の目標である「タイトル奪取」まで突っ走ってもらいたい。
取材・文・写真 / どら増田