「正直、(27日は)投げてほしくなかった。本調子でないのにここまで投げられるんだから、それはそれでやっぱり凄い」(セ・リーグ球団職員の1人)
27日、藤岡が“強行先発”し、完投勝利を収めた(自責点1)。この日の神宮球場のスタンドには、相当数のプロ野球スカウトが陣取っていた。スカウトだけではなく、編成、スコアラーなどの球団職員もいたように見受けられた。正確な球団数、視察者も確認できないほど大挙していたが、前出のセ球団職員同様、「これ以上投げないでくれ」との思いは全員が抱いていたのではないだろうか。
藤岡が22日の中央大学戦(3回戦)で右足首に打球が直撃し、「全治2週間の打撲」と診断されたのは既報通り。東洋大は春秋連覇を目指しているが、2カードを終えた時点で2勝3敗と黒星が先行している。藤岡は居ても立ってもいられなくなったのだろう。前日26日にはブルペン入りし、この27日の日大戦先発を買って出たのだ。
「26日のブルペンでの様子? 右足を庇う素振りは見られませんでした。本当にダメなら、監督さんが投げさせませんよ」(関係者)
一部メディアは「驚異的な回復力」とも称賛していたが…。今季、藤岡は春のリーグ戦、大学野球選手権、日米大学選手権、夏の強化練習と続き、“お疲れモード”に入っている。秋のリーグ戦中の今は連覇という目標があり、また緊張しているから自覚していないかもしれないが、過労は肩やヒジの故障原因にもなりかねない。前出のセ球団職員がこう続ける。
「昨秋の早大3投手を思い出してくださいよ。秋季リーグ戦で慶応大学と再試合を演じ、その後、日本選手権を戦いました。斎藤佑樹、大石達也、福井優也は12月、1月で疲れが取れず、そのままキャンプインし、プロ1年目は精彩に欠きました」
今後、各カードの初戦は藤岡が先発すると思われるが、仮に第2戦を別投手で落とした場合、第3戦に再び藤岡が登板する可能性もある。東洋大・高橋昭雄監督は無理強いをさせる指導者ではないが…。とはいえ、「投げないでくれ」と言うのは、プロ野球サイドのエゴだ。
横浜ベイスターズも、かなりの人数で藤岡を視察していた。9月27日時点で、横浜の左投手が先発しておさめた勝ち星は、「4」。お目当ての1位候補にも不安要素がちらつくとは、運のなさを感じずにはいられない。尾花監督の胸中は−−。(一部敬称略)