“真紀子節”が久しぶりに轟いた。民主党枠で初の代表質問に立った真紀子氏は、張りのある声で麻生首相、閣僚、自民党をメッタ斬り。返す刀で、外相更迭以来、宿敵関係にある小泉元首相を斬り捨てた。
「質問を終えるにあたりまして、かつて自民党に在籍していた当時、親しくしていた2人の自民党議員の最近の発言を披露いたします」
1人目は、政治不信払しょくには国民の側に飛び込む必要があると引退を決意したという。これを「立派。すがすがしい」とほめたたえると、一転、表情を険しくして「2人目のかた…」と続けた。
「議員会館からこの本会議場に続く廊下を一緒に歩いていたときの出来事です。私が『先生が引退されると聞いて、本当にさみしい限りです』と話しかけましたところ、『いやあ、もっと早くに解散してくれたらなあ。こうならなくて済んだかもしれないけど、仕方がないね。でもこうなったからには麻生政権がぎりぎりいっぱいまで続いてくれたほうがいい。そうすれば1カ月でも長く歳費(議員給与)が貰えるからねえ』と、冗談とも本気ともとれるような口調でおっしゃったのです。私は心の底から失望いたしました!」
次期総選挙に出馬せず、今季限りでの引退を表明している自民党議員は十数人いる。しかし本会議場にいただれもが“2人目”は小泉氏で間違いないと確信したはず。真紀子氏は名指しを避けたが、物まねを交えてエピソードを紹介しており、言葉の抑揚などが小泉氏そっくりだったからだ。やたら持ち上げられた1人目の自民党議員も、終わってみれば小泉氏の軽薄ぶりを強調するための道具だったとしか思えない。それぐらい、声を張り上げた。
小泉氏は昨年9月、麻生政権が発足した翌日に地盤の神奈川11区を二男・進次郎氏(27)に譲ると地元支援者に表明。解散総選挙が見送られたことで地盤固めは間延びし、完全にタイミングを狂わされた。
2001年の自民党総裁選で、小泉氏は“後見人”真紀子氏の人気を追い風に総理の座をつかみながら、翌02年には手荒な外務省改革に乗り出した真紀子氏を外相から更迭した。その怨念はすさまじいというほかない。
○麻生首相にはダンディズムを説く
小泉元首相批判には及ばなかったものの、麻生首相もメッタメタにやられた。
真紀子氏は「麻生内閣の不支持は80%台に急増し、その惨状は国民のだれもがあきれかえるほど」とばっさり。施政方針演説を「各省庁が持ち寄った材料による寄木細工のよう。空疎な言葉の壮大な羅列」と断じた。
とどめは引退勧告だ。ストライプのダークスーツに薄紫の光沢系ネクタイを締めた麻生氏を「グズグズと場所ふさぎをして醜態を天下にさらしていることは、日頃スタイルを気にしておられる総理には全く似つかわしくございません。せっかくいつも仕立てのいい背広を着ているんですから、中身のほうも即刻潔い引退を表明されるほうがよろしいと存じます。そのほうが本当のスタイリッシュなダンディーと申せましょうが、いまのままでは、ただ高そうな背広を着ているおじさんで終わってしまいます」とおちょくった。
真紀子氏に体を向けて質問に聞き入った麻生氏は終始ぶぜんとした表情。答弁では引退勧告を無視し、うまく切り返す場面はなかった。
本会議終了後、真紀子氏は記者団に「役人が書いた文章を踏襲している」とダメ出しした。